X-Git-Url: http://git.osdn.jp/view?a=blobdiff_plain;f=doc%2Fjfmglue.tex;h=d44ee51b4f2ed6e5d7dc9c27c0f3e16b60c1546c;hb=6abeb05c5b8703d1871f6d4e861b3505ed8100cf;hp=cc830d9b50234259bb418704a34abe89e57b4d13;hpb=0a0b5bbf24f6170a8d0f66e246d163a3e3f5e27b;p=luatex-ja%2Fluatexja.git diff --git a/doc/jfmglue.tex b/doc/jfmglue.tex index cc830d9..d44ee51 100644 --- a/doc/jfmglue.tex +++ b/doc/jfmglue.tex @@ -6,7 +6,7 @@ \setbox0=\hbox{\kern.5em$\mathstrut#1$\kern.5em}\dp0=0pt \hbox{\vrule $\vcenter{\hsize=\wd0\hrule\kern.5ex\copy0\kern.5ex\hrule}$% - \vrule\kern.1em}} + \vrule\kern.1em}{}} \def\nk{{\rm kern}\ } \def\ng{{\rm glue}\ } \def\np{{\rm penalty}\ } @@ -23,6 +23,11 @@ 本文書では,Lua\TeX-jaが(現時点において)和文処理に関わるglue/kernを どのように挿入するかの内部処理について説明する. +\bigskip +{\large\bf\noindent これは仕様・内部処理の提案の1つにしかすぎません.最終的にこのようになる +保証はどこにもありませんし,現時点でのLuaコードが本文書に従っている保証もありません. +バグが混入している可能性も大きいです.} + \beginsection 予備知識 説明に入る前に,段落やhboxの中身は,\TeX の内部ではnode達による @@ -45,714 +50,505 @@ \item 次のように,nodeがどのように連続しているかを表すことにする. $$ -\node{a}\node{b}_{\rm I}\node{c} +\node{a}\node{b}_{1}\node{c} $$ -右下についている添字は,Lua\TeX-jaにおいてそのnodeの役割を区別するためにつけられた -値(jtypeと呼ぼう)であり,次のようになっている. +下添字は,Lua\TeX-jaにおいてそのnodeの役割を区別するためにつけられた +値(icflagと呼ぼう)であり,次のようになっている. $$ \vbox{\halign{#:\ \hfil&#\hfil\quad&#:\ \hfil&#\hfil\cr -I&イタリック補正由来のkern& -T&|\[x]kanjiskip|に置換されうるkern\cr -J&JFM由来のglue/kern& -K&禁則処理用penalty\cr -E&「行末」との間に入るkern& -KS&|\kanjiskip|用glue\cr -XS&|\xkanjiskip|用glue\cr +1&イタリック補正由来のkern & +2&幅補正のため,hboxにカプセル化された和文文字\cr +3&禁則処理用penalty& +4&JFM由来のglue/kern\cr +5&「行末」との間に入るkern& +6&|\kanjiskip|用glue\cr +7&|\xkanjiskip|用glue& +8&既に処理対象となったnode\cr +15&リスト先頭/末尾に入るglue/kern/penalty\span\omit\span\cr }} $$ +和文処理グルーの挿入処理に一度通されたnodeは,みなicflagが3以上となることに注意. + +なお,上添字はnodeのsubtypeを表す. \item {\sf jaxspmode}のようなサンセリフ体で,|\ltjsetparameter|で設定可能なパラメタ値を表す. -\item タイプライタ体の|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|は,それぞれ「和文間空白」「和欧文間空白」の意味で -抽象的に用いている. +\item タイプライタ体の|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|は, +それぞれ「和文間空白」「和欧文間空白」の意味で抽象的に用いている. \item nil値は$\emptyset$と書く. \enditem -\beginsection JFM由来グルーの挿入 ({\tt luatexja-jfmglue.lua}) +\beginsection 方針など + +本バージョンにおいては,JFM由来グルーと|\[x]kanjiskip|の挿入は同じ段階で行われる. +大雑把に言うと, +$$ +\vbox{\hsize=0.85\hsize\bf 和文処理グルーの挿入処理では,以下は存在しないものとして扱われる: +\item 「文字に付属する」アクセントやイタリック補正. +\item 行中数式の内部. +\item 実際の組版中には現れないinsertion, vadjust, mark, whatsit node達. +\enditem} +$$ + +\beginparagraph 和文文字の「自然長」(JFMにおける{\tt width}の指定値)について + +p\TeX においては,和文文字の行頭と行末に自動的にglueやkernをおくことはできなかったことから, +JFMにおける文字幅の意味は, +$$ +\hbox{\vbox{\hsize=0.8\hsize \noindent +「その文字が行頭におかれるときの,版面左端の位置」を左端,\hfill\break +「その文字が行末におかれるときの,版面右端の位置」を右端としたときの幅}} +$$ +というように,明確な意味があるものであった.例えば,乙部さんによるぶら下げ組パッケージ ({\tt burasage.lzh}) +においては,句読点類(「|,、.。|」の4文字)の文字幅は0.0となっている. + +一方,Lua\TeX-ja においては,和文文字が行末にきた場合,その文字と行末の間にkernを挿入することができる: +例えば,前に挙げた4文字についてぶら下げ組をしたいのであれば, -JFM由来グルーの処理は,「連続する2つのnodeの間に何を入れるか」という単位で行われる. -そのため, -\item node生成を伴わないもの(グループ境界,|\relax|等)は全て無視される. -\item 一方,node生成を伴うものは全て「透過しない」. -例えば,次のソースにおいて,閉じ括弧と開き括弧の間に入る物は, -左と右とで異なる: \begintt -)(  )\hbox{}( + [1701] = { + chars = { 'lineend' } + }, + [42] = { + chars = { ',', '、', '.', '。' }, + align = 'left', left = 0.0, down = 0.0, + width = 0.5, height = 0.88, depth = 0.12, italic=0.0, + kern = { [1701] = -0.5, ...} + }, ... \endtt -\item 「現在位置でのJFM由来グルーの挿入抑制」を行う|\inhibitglue|は,内部では専用のwhatsit node -($\hbox{\tt subtype}=44$, \setbox0=\hbox{|user_id|}$\copy0=30111$)を作ること -によって実装している.これらのnodeは,「現在位置で挿入しない」というフラグを立てるためだけ -に存在するものであって,挿入処理中に全て削除される. -\enditem -以下,$q$, $p$を連続するnodeとする. +のように,「文字|'lineend'|との間に負のkernをおく」ように指定すればよい. +そのため,p\TeX と比較すると,JFMにおける|width|の指定値に絶対的な意味はあまりないことになる. +{\small 行頭にもkern をおけるようにするかどうかは検討中である.} -\beginparagraph 2つの和文文字の間 -この場合,グルー挿入に関係する量は次の通りである.これら3つの量の値によって, -$q$と$p$の間に何が挿入されるかが決定される.これらの記号は他の場合にも用いる. -\item $g$: JFMで指定された,$q$と$p$の間に入るglue/kern. -JFMで規定されていないときは$\emptyset$と書こう. -両ノードで使われているJFMが異なる時の$g$の決定方法は,後に記述する. -\item $w$: JFMで指定された,「$q$の直後で改行が行われた場合, -$q$と行末の間に入るカーン量」の値. +\beginparagraph グルーの挿入単位「塊」 -また,$g-w$で,$g$の自然長を$w$だけ減算したglue/kernを表すことにする($g$がglueならばこのnodeはglue,$g$がkernならばkern). +和文処理グルーの挿入処理は, +ごく大雑把にいうと,「連続する2つのnodeの間に何を挿入するか」の繰り返しである. +実際の挿入処理は,「隣り合った2つの『塊』\IT{Nq}, \IT{Np}の間に何を入れるか」を +単位として行われる. -\item $P$: $q$に対する行末禁則用ペナルティ (post-break penalty) と, -$p$に対する行頭禁則用ペナルティ (pre-break penalty) との和.どちらも -設定されていないときは0となる. -\enditem -なお,間に|\inhibitglue|による指定があった場合,$g=\emptyset$, $w=0$として処理される. +\medskip\noindent{\bf 定義}\quad +「{\bf 塊}」(\IT{Nn}などで表す)とは,次の4つのいずれかの条件を満たすnode(達のリスト) +のことである: +\enum icflagが3以上15未満であるnode達の連続からなるリスト. -設計方針としては, -\item JFM由来で入るものがkernの場合,この場所では行分割は許さない. -\item そうでない場合,(penaltyの値$P$があるが)この場所での行分割は可能である. -\enditem -である.さて,次が実際の場合わけである: - -\enum $w\neq 0$, $g=\emptyset$のとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\nk w}_{\rm E} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{\nk{-w}}_{\rm T} -\node{p} -$$ -この$\node{\nk{-w}}_{\rm T}$は, -「$q$と$p$の間で行分割されないときは間に何のglue/kernもないように見える」ために -挿入されたものである.次のステップで|\[x]kanjiskip|の挿入が行われる時に,このnodeは -|\[x]kanjiskip|用のglueに置換される. - -\enum $w\neq 0$, $g\neq\emptyset$のとき: -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\nk w}_{\rm E} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{g-w}_{\rm J} -\node{p} -$$ +このようなnode達は,既に組み上がったhboxを|\unpackage|により解体したときに発生する. +一度和文処理グルーの挿入処理が行われているため,二重の処理を防ぐためにこうして1つの塊を構成させている. -\enum $w=0$, $g$: kernのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} +なお,icflagが15であるnodeは,処理中に発見されしだい削除される +(hboxの先頭や末尾に挿入されたglue/kern/penaltyであるので, +本来の「段落/hboxの中身に適宜グルーを挿入する」という目的を考えると存在すべきでない). +\enum 数式開始を表す\IT{math\_node}から始まる文中数式を表すnodeのリスト: $$ - -\enum $w=0$, $g$: glueのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} + \node{\hbox{数式境界(開始)}} + \longrightarrow\hbox{(この間,行中数式が続く)} + \node{\hbox{数式境界(終了)}} $$ - -\enum $w=0$, $g=\emptyset$, $P\neq 0$のとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{p} +\enum \IT{glyph\_node}~$p$と,それと切り離すことが望ましくないと考えられるnode達: $$ - -\enum $w=0$, $g=\emptyset$, $P=0$のとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{p} + \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}^2 + \node{\hbox{アクセント文字}} + \node{\nk\hskip-.5em}^2\Bigr] + \node{p} + \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}_1\Bigr] $$ -\enditem +但し,これには$p$が${\rm icflag}=2$のhboxである場合も含む.% +{\small ←この場合の処理は実はおこらない?} +\enum {\bf 以下のどれにもあてはまらない}node~$p$: +\itemitem 組版結果からは消えてしまう,\IT{ins\_node}, +\IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}. +\itemitem penalty(←但し,挿入処理の過程で値が変更されることはある) -なお,両ノードで使われているJFMが異なる時の$g$の決定方法であるが, -\enum $g_{\rm L}$を,$q$に使用されているJFMにおける,「$q$と文字|'diffmet'|」の間に -入るglue/kernの値とする. -\enum $g_{\rm R}$を,$p$に使用されているJFMにおける,「文字|'diffmet'|と$p$」の間に -入るglue/kernの値とする. -\enum 両方から,実際に入る$g$の値を計算する. -\itemitem $g_L$, $g_R$の少なくとも片方が$\emptyset$のときは,$\emptyset$でない方を -そのまま採用する. -\itemitem 両方とも$\emptyset$でない場合は,|differentjfm|の値にそって$g$の値を計算する. \enditem -\beginparagraph 和文文字と(和文文字,kern以外のnode)の間 - -「和文文字の間」の場合に対して,以下が異なる: -\item $g$は,$q$に使用されているJFMにおける,「$q$と文字|'jcharbdd'|」の間に -入るglue/kernの値である. -\item $p$が{\bf penaltyでない場合}は,いつもこの位置で行分割できるようにするため, -case~6 ($w$, $P=0$, $g=\emptyset$) の場合にも,$q$と$p$の間には -0という値のpenaltyが入る.即ち,次のようになる. -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np 0}_{\rm K} -\node{p} -$$ -\enditem +\medskip\noindent{\bf 記号}\quad +\IT{Bp}で,塊\IT{Nq}と塊\IT{Np}の間にある\IT{penalty\_node}達の配列を表す. -\beginparagraph (和文文字,kern以外のnode)と和文文字の間 -この場合も,基本的には「和文文字の間」と似ているが,以下が異なる: -\item $g$は,$p$のJFMにおける,「文字|'jcharbdd'|と$p$」の間に -入るglue/kernの値である. -\item 常に$w=0$である. -\item いつもこの位置で行分割できるようにするため, -case~6 ($w$, $P=0$, $g=\emptyset$) の場合にも,$q$と$p$の間には -0という値のpenaltyが入る. -\enditem +\beginsection 挿入処理の大枠 -即ち,次の3通りになる. -\enum $g$: kernのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} -$$ +\beginparagraph 「塊」の保持するデータ -\enum $g$: glueのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} -$$ +「塊」\IT{Np}は,内部では少なくとも次の要素を持ったテーブルとして表される: -\enum $g=\emptyset$のとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np P}_{\rm K} -\node{p} -$$ +\item \IT{.first}: \IT{Np}の先頭のnode. +\item \IT{.nuc}: \IT{Np}の「核」となるnode. +\itemitem 1., 2.によるものである場合,$\mibox{Np.nuc}=\mibox{Np.first}$. +\item \IT{.last}: \IT{Np}の最後のnode. +\item \IT{.id}: \IT{Np}の種類を表す値. +\itemitem 1.によるものである場合,\IT{id\_pbox}(Pseudo BOXのつもり). +\itemitem 3.によるものであり,$p$が和文文字だった場合,\IT{id\_jglyph}. +\itemitem 4.によるものであり,$p$が垂直変位がnon-zeroなhbox, +あるいはvbox, ruleだった場合,\IT{id\_box\_like}. +\itemitem それ以外の場合,node~$p$の種別を表す数値$p.\mibox{id}$そのもの. +(数値そのものだと使い勝手が悪いので,\IT{id\_glyph}, \IT{id\_glue}, \IT{id\_kern}などと +別名を定義している) \enditem -\beginparagraph 和文文字とkernの間,kernと和文文字の間 - -和文文字の後にkernが続いた場合,あるいはkernの後に和文文字が続いた場合, -この間で行分割はできないものとしている.そのため, -以下の3ケースに限られる: -\enum $g$: kernのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} -$$ - -\enum $g$: glueのとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{\np 10000}_{\rm K} -\node{g}_{\rm J} -\node{p} -$$ - -\enum $g=\emptyset$のとき -$$\ncount=0 -\node{q} -\node{p} -$$ +\medskip\noindent{\bf 定義}\quad +「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{head}(\mibox{Np})$は,以下で定義される: + +\noindent{\small (説明の都合上作った記法で,Luaソース中にはこのような書き方はない)} + +\item \IT{Np.id}が\IT{id\_hlist}の場合:後に述べる{\tt check\_box}関数を用いて, +hbox~\IT{Np.nuc}中の「最初のnode」「最後のnode」を求める. +\item \IT{Np.id}が\IT{id\_pbox}の場合:\IT{id\_hlist}の場合とほぼ同様. +\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_glyph}$(欧文文字)の場合: +\itemitem \IT{glyph\_node}~\IT{Np.nuc}が単一の文字を格納している(合字でない)場合は,\IT{Np.nuc}自身. +\itemitem そうでない場合は,合字の構成要素の先頭→構成要素の先頭→…… +と再帰的に探索し,最後にたどり着いた\IT{glyph\_node}. +\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_disc}$ (discretionary break) の場合: +\IT{disc\_node}は, +\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)の場合:\IT{Np.nuc}自身. +\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_math}$(数式境界)の場合: +「文字コード$-1$の欧文文字」を仮想的に考え,それを$\mibox{head}(\mibox{Np})$とする. +\item それ以外の場合:未定義.敢えて書けば$\mibox{head}(\mibox{Np}):=\emptyset$. \enditem -なお,ここでの$g$は, -\item $p$がkernだった場合は, -$p$のJFMにおける,「|'jcharbdd'|と$p$」の間に -入るglue/kernの値. -\item $q$がkernだった場合は, -$q$のJFMにおける,「$q$と|'jcharbdd'|」の間に -入るglue/kernの値. +\noindent 同様にして,「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{last}(\mibox{Np})$も定義され, +「\IT{Np}は,先頭が$\mibox{head}(\mibox{Np})$, +末尾が$\mibox{tail}(\mibox{Np})$であるような単語」のように +考えることができる. + +\medskip\noindent{\bf 定義}\quad +「\IT{glyph\_node}~$h$の情報を算出する」とは, +$h\neq\emptyset$の時に,テーブル\IT{Np}に +以下のような要素を追加することである: + +\item \IT{.pre}: $h$の文字コードに対する{\sf prebreakpenalty}パラメタの値 +\item \IT{.post}: $h$の文字コードに対する{\sf postbreakpenalty}パラメタの値 +\item \IT{.xspc\_before}, \IT{.xspc\_after}: $h$の前後に|\xkanjiskip|が挿入可能であるかの +指定値(パラメタ{\sf jaxspmode}, {\sf alxspmode}由来) +\item \IT{.auto\_xspc}: $h$での{\sf autoxspacing}パラメタの値 \enditem -\beginparagraph 要検討の箇所 +$h$が和文文字を格納している場合は,さらに次の要素の追加作業も含む: -私が推測するに,欧文では, -\item 単語内ではフォントは変わらない; -\item 単語内では,明示的に/ハイフネーションにより挿入されたdiscretionary break以外では -行分割がおきない; +\item \IT{.size}: $h$で使われている和文フォントのフォントサイズ. +\item \IT{.met}, \IT{.var}: 使われているJFMの情報. +\item \IT{.auto\_kspc}: {\sf autospacing}パラメタの値. \enditem -という事情があるため,TFM由来のkernや合字処理は(nodeを生成しないもの以外は) -何も透過しないという状態になっているものと思われます. -そのため,JFMグルー等の仕様を考える場合,欧文でいう「単語」に対応するようなものは -何か,というのを考える必要があります.現実装では,素直に欧文の合字処理と同様のものであると考え, -透過するnodeはない,という仕様にしています. -しかし,|\[x]kanjiskip|の処理と共通にしてしまうというのも -考え方によってはありかもしれません. +\beginparagraph 全体図 -\bigskip -\item {\bf イタリック補正のkernの周囲} +\enum 変数類の初期化 +\itemitem 処理対象が段落の中身(後で行分割される)の場合:$\mibox{mode}\leftarrow\top$ +\itemT \IT{lp}(node走査用カーソル)の初期位置は, +リスト先頭部にある|\parindent|由来のhboxや +local paragraph($\Omega$由来)等の情報を格納するwhatsit nodeたちが終わった所 +(つまり,段落本来の先頭部分)となる. +\itemT \IT{last}(リスト末尾のnode)も,リストの最後部に挿入される|\parfillskip|由来のglue% +を指す. +\itemitem +処理対象がhboxの中身の場合:$\mibox{mode}\leftarrow\bot$ +\itemT \IT{lp}はリスト先頭. +\itemT 番人として,リスト末尾にkernを挿入.\IT{last}はこのkernとなる. -例えば,|jfm-ujis.lua|では,|'jcharbdd'|は文字クラス -0であるため,今の実装では,\hfil\break -「|)\/(|」という入力からは,次のnodeの並びを得る: -\setbox1=\hbox{|\/|}% -$$ -\vbox{\halign{$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil\cr -\node{\hbox{)}}&\ncount=1 -\node{\np 10000}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}\cr&\ncount=1 -\node{\nk \copy1}&\ncount=1 -\node{\np 10000}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1 -\node{\hbox{(}}\cr -}} -$$ -一方,イタリック補正をJFM由来グルーが透過するとしたならば,当然 -$$ -\node{\hbox{)}} -\node{\nk \copy1} -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}} -\node{\hbox{(}} -$$ -となる(実際の組版イメージでは, -「{\tenmini 斜め)}\hbox{}(」「{\tenmini 斜め)}(」).どちらにするか? +\enum 先頭が\IT{lp}以降にある塊で,一番早いものを\IT{Np}にセットする. +\itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら,処理対象のリストに塊はないので,8.へ. +\itemitem そうでなければ,$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく. +\itemitem 本段階終了後,\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる. +\enum ({\tt handle\_list\_head}) +リストに最初に出てくる塊\IT{Np}が求まったので,リスト「先頭」とこの塊との間に和文処理グルーを挿入. -\item {\bf penaltyの周囲} +\enum 今の塊\IT{Np}と,その次の塊の間に入る和文処理グルーを求めるため, +一旦$\mibox{Nq}\leftarrow \mibox{Np}$として待避させ,次の塊\IT{Np}を探索する. +\itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら,\IT{Nq}がリスト中最後の塊であるので, +7.へ. +\itemitem そうでなければ,$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく. +\itemitem 本段階終了後,\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる. -これも,例えば次の設定の下では,「|)\penalty1701(|」からは以下を得る: -\itemitem 「)」と行末の間に$-0.5\z$だけkernを入れる. -\itemitem 「)」「(」の行頭/行末禁則用penaltyの値はどれも1000. -$$ -\vbox{\halign{$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil\cr -\node{\hbox{)}}&\ncount=1 -\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1 -\node{\np 1000}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 1\z_{-0.5}}_{\rm J}\cr -&\ncount=1\node{\np 1701}&\ncount=1 -\node{\np 1000}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1 -\node{\hbox{(}}\cr}} -$$ -\leftskip2\zw -例えばpenaltyを合算することとした場合,上の入力例では本来「)」「(」の間に -1701のpenaltyがあるのだから, -$$ -\vbox{\halign{$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil\cr -\node{\hbox{)}}&\ncount=1 -\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1 -\node{\np 3701}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1 -\node{\hbox{(}}\cr -\node{\hbox{)}}&\ncount=1 -\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1 -\node{\np 3701}_{\rm K}&\ncount=1 -\node{\ng 1\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1 -\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1 -\node{\hbox{(}}\cr -}} -$$ -のどちらか(上はpenaltyを透過する場合,下は透過しない場合)にするのが -良いと思われます. +\enum \IT{Nq}と\IT{Np}の間に和文処理グルーを挿入する.\IT{Np.id}による場合分けを行う. +「main loop その\nobreak1,~2」を参照のこと. +\enum \IT{Np}が単一の文字ではない{\small (合字など)}可能性がある以下の場合において, +$\mibox{tail}(\mibox{Np})$の情報を算出する.終わったら,再びループに入るため,4.へ. -\item {\bf discretionary breakの取り扱い} -discretionary break (\IT{disc\_node})は,行分割時の行末の内容
,
-行頭の内容,それに行分割しないときの内容の3つをリストの形で
-持っている.|linebreak.w|を見る限り,Lua\TeX でも
, , の
-中身にはglueやpenaltyを許容していないようだ.
+\itemitem \IT{id\_glyph}(欧文文字)のとき
+\itemitem \IT{id\_disc} (discretionary break) のとき
+\itemitem \IT{id\_hlist}のとき
+\itemitem \IT{id\_pbox}のとき
 
-現行の実装では,
, , のどれも,和文フォントへの置換の
-段階からして行われていない(だから中身は全部欧文扱いとなる).
-{\small 単純にサボっていました|^^;|}
-
, , の中身にglueやpenaltyが許容されないことから,
-これらに対する和文用処理の方法として,次の2種類が挙げられる.
-私は前者で良いのではないかと思っているのだが…….
-\itemitem (現行のまま)discretionary breakの中身に和文文字はないものと想定する.
-例えば
の中身に和文文字を入れたい場合は,
の中身全体を
-必ずhboxで括ることとする.
-\itemitem 「glueを挿入」を全部「自然長だけを取り出したkernを挿入」に置き換え,
-普段の和文処理グルー挿入処理を流用する.
+\enum ({\tt handle\_list\_tail}) 
+リストの最後にある塊\IT{Nq}が求まったので,この塊とリスト「末尾」の間に和文処理グルーを挿入.
 
-
-\item {\bf 数式の取り扱い}
-
-まだ数式中に和文文字が(hboxでカプセル化されることなく)出現することは想定していない.
-実用的にはそれでも十分だと思うが,もしp\TeX のように単に
-\begintt
-$aあa$
-\endtt
-などと書いても和文文字が
-出力されるようにするとなれば,「数式リストから変換されてできた水平リストでは,
-和文処理グルーの挿入処理を無効とする」ようにしないといけないだろう.
+\enum $\mibox{mode}=\bot$の場合,番人となるkernを1.において挿入したので,その番人を削除する.
 
 \enditem
 
-\beginsection {\tt \char"5C[x]kanjiskip}の挿入%"
-
-現実装の|\[x]kanjiskip|の挿入の方針として,
-\item JFMグルーが挿入されていないところに「標準の空き量」として挿入する.
-\item 実際の段落/hboxの内容に即して,組版イメージの見た目に関係のないところは透過する.
-\enditem
+\beginsection リスト先頭・末尾の処理と「boxの内容」
 
-\beginparagraph 処理の概要
+\beginparagraph リスト先頭の処理 ({\tt handle\_list\_head})
 
-|\[x]kanjiskip|挿入処理では,次の3つのnodeを用いている.
-$$\ncount=0
-\node{\IT{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\IT{nq}}\longrightarrow\cdots
-\node{\IT{np}}
-$$
-\item \IT{nr}と\IT{np}の間に|\[x]kanjiskip|を挿入しようとする.
-\item 実際にnodeの形で挿入しようとする場所は$\it nq$の直後である.
-\item \IT{nr}, \IT{nq}は異なるnodeとは限らない.
-\item {\bf \IT{np}はリストの先頭から末尾までループで渡る.}その過程で
-\IT{nr}, \IT{nq}を適宜更新し,実際のnode挿入処理を行っている.
-\item 厳密には,コード中では\IT{nr}という変数は使っていない.代わりに使われているのは,
-\itemitem $\mibox{insert\_skip}\in \{\mibox{no\_skip}, 
-  \mibox{after\_schar}, \mibox{after\_wchar}\}$: 
-「node \IT{nr}」の種類を表す:
-\itemT \IT{no\_skip}: 「node \IT{nr}」の後ろ(\IT{nr}と\IT{np}の間)に
-|\[x]kanjiskip|が入ることはない.
-\itemT \IT{after\_schar}: 「node \IT{nr}」を,欧文文字(の入った\IT{glyph\_node})であり,
-かつ{\sf alxspmode}パラメータの指定により「\IT{nr}の後ろに|\xkanjiskip|の挿入を許可する」ようなものとみなす.
-\itemT \IT{after\_wchar}: 「node \IT{nr}」を和文文字(の入った\IT{glyph\_node})とみなす.
-\itemitem \IT{nrc}: 「node \IT{nr}の文字コード」を表す.
-\itemitem \IT{nrf\/}: 「\IT{nr}のフォント」を表す.
-\itemitem $\mibox{nr\_spc}[1]$: 「node \IT{nr}」における
-{\sf autospacing}(|\kanjiskip|の自動挿入を行うか否か)の設定値.
-\itemitem $\mibox{nr\_spc}[2]$: 「node \IT{nr}」における
-{\sf autoxspacing}(|\xkanjiskip|の自動挿入を行うか否か)の設定値.
-
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-\IT{nrc}, \IT{nrf}の値は,$\mibox{insert\_skip}=\mibox{after\_wchar}$のときのみ用いられる.
-$\mibox{insert\_skip}=\mibox{no\_skip}$のときには,それだけで情報は十分であるから,
-\IT{nr\_spc}, \IT{nq}の値も用いられない.
+次の場合に,
+\IT{Np}で使われているのと同じJFMを使った「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
+\IT{Np}との間に入るglue/kernを,\IT{Np.first}の直前に挿入する:
+\item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字であるとき.
 \enditem
-
-ループの中で,以下の場合には\IT{nr}は変化せず,$\IT{nq}\leftarrow \IT{np}$となる.
-つまり,これらのnodeに対して|\[x]kanjiskip|は透過する:
-\item \IT{np}がpenaltyの場合
-\item \IT{np}が$\hbox{\tt subtype}=0$のkern(TFM由来)の場合.
-\item \IT{np}が$\hbox{\tt subtype}=1$のkern(つまり,明示的kernかイタリック補正由来)であって,jtypeが
 $$
-\hbox{I (イタリック補正),E(行末との間),T(一時的)}
+\vcenter{\halign{$\mibox{mode}=#$:\qquad\hfil&$#$\hfil\cr
+\bot&\node{\kern-1em}\,\hbox{(リスト先頭)}\longrightarrow\cdots\node{g}_{15}
+\node{\mibox{Np}}\cr
+\top&\node{\hbox{{\tt\char92 parindent}由来hbox}}\longrightarrow\cdots
+\Bigl[\node{\np 10000}_{15}\Bigr]\node{g}_{15}\node{\mibox{Np}}\cr
+}}
 $$
-であった場合.後者2つはJFMグルーの挿入で入るものなので,
-ユーザは「イタリック補正は透過」と考えればよい.
-
-\item \IT{np}がinsertion, mark, |\vadjust|, whatsitのnodeである場合.
-これらは水平リストからは消え去る運命にある.
-\enditem
+ここで,$g$がglueかつ$\mibox{mode}=\top$かつ$\#\mibox{Bp}=0$のときのみ,|\parindent|由来のhboxの直後で改行されることを防ぐために
+$g$の直前にpenaltyを挿入する.{\small 
+($\#\mibox{Bp}$が1以上の場合は,|\parindent|と\IT{Np}の間にある
+penaltyのため,\IT{Np}の直前での改行が起こり得る状態となっているので,
+特にそれを抑制することもしない)\inhibitglue}.
 
 
-\beginparagraph \IT{np}が文字 (\IT{glyph\_node}) の場合
-
-この場合がやはり一番基本となる.
-\enum $\mibox{insert\_skip}=\mibox{after\_schar}$, \IT{np}: 和文文字の場合
-
-前に書いたように,「node \IT{nr}」は(直後に|\xkanjiskip|の挿入が許可されている)欧文文字と
-みなされている.
-そのため,「node \IT{nr}」と\IT{np}の間に|\xkanjiskip|の入る条件は以下である.
-\itemitem 文字\IT{np}に対する{\sf jaxspmode}パラメータの指定において
-「直前への|\xkanjiskip|の挿入が許可」されている.
-\itemitem 「node \IT{nr}における」{\sf autoxspacing}パラメタの値 ($\mibox{nr\_spc}[2]$) か,
-\IT{np}における{\sf autoxspacing}の値の少なくとも一方が真である.
-
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-まず,実際に入る|\xkanjiskip|の量$g$を次の方法で決定する:
-\itemitem {\sf xkanjiskip}パラメータの自然長が|\maxdimen|でない場合,
-{\sf xkanjiskip}パラメータの値をそのまま採用する.
-\itemitem {\sf xkanjiskip}パラメータの自然長が|\maxdimen|の場合は,
-\IT{np}で使われているJFMに設定されている|\xkanjiskip|の量を用いる.
-\itemitem 上の2つのどれでもない場合,fallbackとして0を用いる.
-
-{\bf 要検討}:既にJFMグルー挿入処理で和欧文間の行分割は可能としているので
-0を挿入する意味はない?
-
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-次にこのようにして決定された$g$を実際に挿入する:
-\itemitem ほとんどの場合,$g$の値をもつglueを\IT{nq}の直後に挿入する.
-$$\ncount=0
-\node{\mibox{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{nq}}\node{\ng g}_{\rm XS}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{np}}
-$$
-\itemitem \IT{np}の直前が${\rm jtype}={\rm T}$なnodeの場合,そのnodeに
-$g$の分だけ自然長/伸び/縮み量を加算する.
-$$\ncount=0
-\vbox{\halign{$#$\hfil\cr
-\node{\mibox{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{nq}}\longrightarrow\cdots
-\node{\ng h}_{\rm T}
-\node{\mibox{np}}\cr
-\hfil\Downarrow\cr
-\vadjust{\bigskip}
-\node{\mibox{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{nq}}\longrightarrow\cdots
-\node{\ng g+h}_{\rm XS}
-\node{\mibox{np}}\cr
-\node{\mibox{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{nq}}\longrightarrow\cdots
-\node{\nk k}_{\rm T}
-\node{\mibox{np}}\cr
-\hfil\Downarrow\cr
-\node{\mibox{nr}}\longrightarrow\cdots
-\node{\mibox{nq}}\longrightarrow\cdots
-\node{\ng g+k}_{\rm XS}
-\node{\mibox{np}}\cr
-}}
-$$
+\beginparagraph リスト末尾の処理 ({\tt handle\_list\_tail})
 
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-最後に,次のループに移るために,次の処理を行う:
-\itemitem 
-$\mibox{nq}\leftarrow \mibox{np}$, 
-$\mibox{nr\_spcの設定}$, 
-$\mibox{nrf}\leftarrow \mibox{np}.\mibox{font}$, 
-$\mibox{nrc}\leftarrow \mibox{np}.\mibox{char}$
-\itemitem $\mibox{np}\leftarrow \mibox{next\/}(\mibox{np})$
-\itemitem $\mibox{insert\_skip}\leftarrow \mibox{after\_wchar}$
-
-\enum $\mibox{insert\_skip}=\mibox{after\_wchar}$, \IT{np}: 欧文文字の場合
-
-前に書いたように,「node \IT{nr}」は和文文字とみなされている.
-そのため,「node \IT{nr}」と\IT{np}の間に|\xkanjiskip|の挿入が起こるための条件は
-次の3条件が満たされていることである:
-\itemitem \IT{nrc}番の和文文字に対する{\sf jaxspmode}パラメータの設定で,
-「直後への|\xkanjiskip|挿入」が許可されている.
-\itemitem \IT{np}の文字{\small(もし\IT{np}が合字であれば,合字の構成要素の最初の文字)}%
-に対する{\sf alxspmode}パラメータの設定で,
-「直前への|\xkanjiskip|挿入」が許可されている.
-\itemitem \IT{nr}における{\sf autoxspacing}パラメタの値 ($\mibox{nr\_spc}[2]$) か,
-「node \IT{nr}」における{\sf autoxspacing}の値の少なくとも一方が真である.
-
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-この後,実際に|\xkanjiskip|の量を計算し,nodeの形で実際に挿入するところは,
-量の決定のところで\IT{np}の代わりに\IT{nrf}を用いる以外は同じである.
-最後の,次のループに移るための処理では,次が行われる.
-\itemitem 
-$\mibox{nq}\leftarrow \mibox{np}$, 
-$\mibox{nrc}\leftarrow \mibox{np}.\mibox{char}$, 
-$\mibox{nr\_spcの設定}$
-\itemitem $\mibox{np}\leftarrow \mibox{next\/}(\mibox{np})$
-\itemitem \IT{insert\_skip}の設定.
-
-$\mibox{insert\_skip}\leftarrow \mibox{after\_schar}$となるのは,
-\IT{np}の文字{\small(もし\IT{np}が合字であれば,合字の構成要素の末尾の文字)}%
-における{\sf alxspmode}パラメータの設定で,
-「直後への|\xkanjiskip|挿入」が許可されている場合である.
-そうでないときは,$\mibox{insert\_skip}\leftarrow \mibox{no\_skip}$となる.
-
-\enum $\mibox{insert\_skip}=\mibox{after\_wchar}$, \IT{np}: 和文文字の場合
-
-この場合は|\xkanjiskip|の代わりに|\kanjiskip|を挿入することとなる.
-{\sf jaxspmode}, {\sf alxspmode}のように「直前/直後への|\kanjiskip|挿入許可の制御」
-を行うパラメータは存在しない.「{\sf autospacing}で自動挿入が禁止される」とマニュアルでは言っているが,
-それは{\bf 挿入する|\kanjiskip|の量を一時的に0にしているだけで,
-「node \IT{nr}」と\IT{np}の間には
-常に|\kanjiskip|が入ることには変わりはない}ことに注意.
+この場合,\IT{mode}の値により処理が全く異なる.
 
-\medskip
-実際に入る|\kanjiskip|の量$g$は次の方法で決定される:
-\itemitem \IT{nr}における{\sf autospacing}の値 ($\mibox{nr\_spc}[1]$) か,
-\IT{np}における{\sf autospacing}の値が共に偽なら,$g=0$.
-\itemitem {\sf kanjiskip}パラメータの自然長が|\maxdimen|でない場合,
-{\sf kanjiskip}パラメータの値をそのまま採用する.
-\itemitem {\sf xkanjiskip}パラメータの自然長が|\maxdimen|の場合は,
-\IT{np}で使われているJFMに設定されている|\kanjiskip|の量を用いる:
-\itemT 「node \IT{nr}」で使用されているJFMと,\IT{np}で使用されているJFMそれぞれに
-|\kanjiskip|の値が設定されている場合,…….
-
-\itemitem 上の3つのどれでもない場合,fallbackとして0を用いる.
+\noindent{\bf A: \IT{mode}が偽である場合.}
 
+この場合はリストはhboxの中身だから,行分割はおこり得ない.
+リスト先頭の処理と同様に,
+次の場合に
+\IT{Nq}と「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
+の間に入るglue/kernを,\IT{Nq.last}の直後に挿入する:
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき.
 \enditem
+$$
+\node{\mibox{Nq}}\node{g}_{15}\longrightarrow\cdots\node{\nk\hbox{(番人)}}
+$$
+上の番人は,次のstepで除去されるのだった.
 
 \medskip
-$g$を実際に挿入するところは,今の場合も1.の場合と変わらない.
-次のループに移るために\IT{nq}等の設定処理も,1.と同じである.
+\noindent{\bf B: \IT{mode}が真である場合.}
 
-\beginparagraph \IT{np}がhboxの場合
+この場合,段落の末尾には常に|\penalty 10000|と|\parfillskip|由来のグルーが存在する.
+そのため,上のように「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」との空白を考えるのではなく,
+まず,\IT{Nq}が行末にきたときに行末との間に入る空白$w$を代わりに挿入する.
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき.
+\enditem
+$$
+\node{\mibox{Nq}}\node{\nk w}_{15}\node{\np10000}\longrightarrow\cdots
+\node{\ng (\hbox{\tt\char92 parfillskip})}
+$$
+次に,|\jcharwidowpenalty|の挿入処理を行う→省略.
 
-|\[x]kanjiskip|は,垂直変位が0である(即ち,|\raise|, |\lower|により上下に移動されていない)
-hboxの境界を跨ぐ.
+\beginparagraph box内の「最初/最後の文字」の検索 ({\tt check\_box})
 
-\enum hbox内の「最初のnode」\IT{first\_char}と「最後のnode」\IT{last\_char}を探索する.
-この探索は,次を透過する:
-\itemitem 垂直変位が0であるhboxの境界(但し,空hboxは透過しない).
-\itemitem insertion, mark, |\vadjust|, whatsit, penalty用のnode.
-\itemitem 「最初のnode」「最後のnode」それぞれにいえることだが,文字 (\IT{glyph\_node}) でない場合は
-\IT{first\_char},~\IT{last\_char}はそれぞれ$\emptyset$となる.
+「hboxの中の文字と外の文字の間に」|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|の挿入を行えるようにするため,
+{\tt check\_box}関数ではhbox内の「最初のnode」「最後のnode」の検索を行う.
 
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-前者の具体例として,例えば,次の入力を考える.
-\begintt
-あ\hbox{a}い\hbox{\hbox{}b\hbox{}}う\hbox{}cえ\hbox{\hbox{d}}お
-\endtt
-すると,
-$$
-\vbox{\halign{#の間のhbox\hfil\quad $\longrightarrow$\quad
-&$\mibox{first\_char}=\hbox{#}$,\ \hfil
-&$\mibox{last\_char}=\hbox{#}$\hfil\cr
-1.\ 「あ」「い」&「a」&「a」\cr
-2.\ 「い」「う」&$\emptyset$&$\emptyset$\cr
-3.\ 「う」「c」&$\emptyset$&$\emptyset$\cr
-4.\ 「え」「お」&「d」&「d」\cr
-}}
-$$%$
-となる.
-
-\enum \IT{np}の前に|\[x]kanjiskip|を挿入するか否か,あるいは実際に挿入する量の決定は,
-\IT{first\_char}に対しての処理をそのまま適用する.つまり,上の例では
-\itemitem 「あ」と「a」の間に|\xkanjiskip|が挿入されることから,「あ」とhbox 1.の間には|\xkanjiskip|が挿入される.
-\itemitem 「い」とhbox 2.の間には|\xkanjiskip|が挿入されない.
-
-\enum 同様に,\IT{np}の後ろに|\[x]kanjiskip|を挿入するか否かは,
-文字\IT{last\_char}の後ろに対してどうなるかの値を用いる.上の例では,
-\itemitem 「a」と「い」の間に|\xkanjiskip|が挿入されることから,hbox 1.と「い」の間には|\xkanjiskip|が挿入される.
-\itemitem hbox 2.と「う」の間には|\xkanjiskip|が挿入されない.
-\medskip\leftskip=2\zw\noindent
-次のループに進むための設定も,node~\IT{last\_char}における値をもとに行う.
+\item 以下のnodeは検索から除外される:
+\itemitem 組版結果からは消えてしまう,\IT{ins\_node}, 
+\IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}, penalty.
+\itemitem (box中身の先頭/末尾に入っている)icflagが7のglue/kern/penalty.
+\itemitem アクセント部とイタリック補正.
+\item \IT{hlist\_node}~$q$に出会ったら,$q$の垂直変位量が0である限り,検索は$q$の内部も進む.以下同文.
+\item 検索して得られた「最初のnode」「最後のnode」がそれぞれ\IT{glyph\_node}でなければ,
+実際には$\emptyset$を返す.
 \enditem
 
-以上より,項目1.で与えられた入力では,次の出力が得られる:
-$$
-\hbox{あ\hbox{a}い\hbox{\hbox{}b\hbox{}}う\hbox{}cえ\hbox{\hbox{d}}お}
-$$
-{\bf 要検討:}空のhboxは跨がないようにしているのは,次の2つを使い分けられるようにするため:
-\item JFMグルー挿入の抑止:|\inhibitglue|
-\item 全ての和文処理グルー挿入の抑止:
-|\inhibitglue\hbox{}\inhibitglue|
+\vfill\eject
+\beginsection main loop
+
+\beginparagraph 一覧表
+
+\IT{Nq}, \IT{Np}の種類別に挿入されるglue/kernの種別を表にすると次のようになる.
+
+\def\;{\hskip0.25em}\ltjsetparameter{jacharrange={+1}}
+\def\gkf#1#2#3#4#5{$\vcenter{\small\rm\halign{\hbox to 1em{\hss##\hss}\;\vrule&%
+\hbox to 3em{\hss##\hss}&\vrule\;\hbox to 1em{\hss##\hss}\cr
+#1\mathstrut&\omit\hfil #2\span\omit\cr\noalign{\hrule}#3\strut\cr}}$}
+\setbox1=\hbox{\gkf{E}{M→K}{○}{nor}{○}}
+\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.5em\relax depth \dimexpr \dp1\relax}
+$$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
+\vcenter{\halign{\hfil#\hfil\hskip1em\copy2%
+\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil%
+\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\cr
+\raise0.5em\hbox{$\vcenter{\hbox{\IT{Nq}→}\smallskip\hbox{\IT{Np}↓}}$}%
+&和文1&和文2&欧文&箱&id\_glue&id\_kern\cr
+\noalign{\hrule}
+和文1&
+\gkf{E}{M→K}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$→K}{×}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$→X}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{all}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{sup}{○}\cr
+和文2&
+\gkf{E}{$\rm O_B$→K}{○}{nor}{×}&
+\gkf{}{K}{×}{sup}{×}&
+\gkf{}{X}{○}{sup}{×}\cr
+欧文&
+\gkf{E}{$\rm O_B$→X}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{X}{○}{sup}{×}\cr
+箱&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{alw}{---}\cr
+\IT{id\_glue}&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{nor}{---}\cr
+\IT{id\_kern}&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{sup}{---}\cr
+}}$$
+
+\item {\bf 項目名}\quad 表1行目の\IT{Nq}の種類について説明する.\IT{Np}についても同様.
+\itemitem 「和文1」:リスト中に直接出現している和文文字.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$であったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$かつ$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が和文文字であったとき.
+\itemitem 「和文2」:リスト内にあるhboxの中身として出現した和文文字.すなわち,
+$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_hlist}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が和文文字であったとき.
+\itemitem 「欧文」:$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字であったとき.即ち,
+\itemT リスト中に直接出現しているとき($\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$ or~%
+$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$かつ$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字).
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_hlist}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字であったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_math}$であったとき.
+\itemitem 「箱」:前後に和文処理グルーが挿入されない用なbox状のnode.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_list}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が文字でなかった(未定義)だったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_box\_like}$のとき.
+\itemitem 「\IT{id\_glue}」:そのまま,$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_glue}$であったとき.
+\itemitem 「\IT{id\_kern}」:そのまま,$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_kern}$であったとき.
+
+\item 表中の各セルは,それぞれ次のような内容を表している:
+$$\vcenter{\rm\halign{\hbox to 3em{\hss#\hss}\;\vrule&%
+\hbox to 3.5em{\hss#\hss}&\vrule\;\hbox to 3em{\hss#\hss}\cr
+左空白\mathstrut&\omit\hfil 右空白\span\omit\cr\noalign{\hrule}L&P取扱\strut&R\cr}}$$
+
+\itemitem 「左空白」:\IT{Nq}の直後に挿入される空白の種類.空欄は,何も入らないことを表す.
+\itemitem 「右空白」:\IT{Np}の直前に挿入される空白の種類.
+
+なお,「A→B」は,まずAの種類のglue/kernを調べ,それが未定義ならば,
+Bの種類のglue/kernを採用することを示している.このとき,矢印の右側に入る空白%
+(K, X)はいつでも定義されていることに注意.
+
+\itemitem 「P取扱」:\IT{Nq}と\IT{Np}の間に入る禁則用ペナルティの取扱の方法を表す.
+\IT{Nq}と\IT{Np}の間で常に行分割を許すかに伴い,
+{\bf nor}mal, {\bf alw}ays, {\bf sup}pressの3種類がある.
+\itemitem 「L」「R」:禁則用ペナルティの挿入処理において,
+\IT{Nq.post}~(L)や\IT{Np.pre}~(R)の値を実際に活用するかどうかを示す.値は次の3種類:
+$$
+\hbox{○(利用する),×(利用せず,0として扱う),---(未定義のため0扱い)}$$
 \enditem
 
-なお,\IT{np}の垂直変位が0でない場合は,\IT{np}の前後への|\[x]kanjiskip|の挿入は行われない
-(即ち,$\mibox{insert\_skip}\leftarrow\mibox{no\_skip}$となる).
 
+\beginparagraph 挿入されるglue/kernの種類
 
-\beginparagraph \IT{np}がkernの場合
+前節の表にある空白の種類についての解説を行う.
 
-前に書いたように,|subtype|が0のkern(TFM由来)や,|subtype|が1であってもjtypeがI, E,~Tのkernは
-挿入処理を透過してしまうので,今問題にしているのはそうでない場合である.
+\item E: \IT{Nq}が行末にきたとき,
+\IT{Nq}と行末の間に入る空白 (kern).挿入位置は\IT{Nq.last}の直後.
+\itemitem JFMでは「文字コード|'lineend'|の文字」との間に入るkern量として設定できる.
+\itemitem 右空白がkernであるときは挿入されない.
+\itemitem この種類のkernが挿入される時,右空白は自然長がEの分だけ引かれる.
 
-\item $\hbox{\tt subtype}=1$の場合.
 
-挿入処理で透過されないのは
-jtypeがない(明示的kern)か,jtypeがJ(JFM由来グルー)という2つの場合であるが,
-いずれの場合も,\IT{np}の周囲には|\[x]kanjiskip|の挿入は行われない.そのため,次ループのために
-行われる処理は,$\mibox{insert\_skip}\leftarrow\mibox{no\_skip}$, 
-$\mibox{np}\leftarrow\mibox{next}(\mibox{np})$だけである.
-
-\item $\hbox{\tt subtype}=2$(|\accent|由来)の場合.
-
-\IT{np}はリストの先頭から走査されていることから,\IT{np}に続くnodeの並びは
-$$\ncount=0
-\node{\mibox{np}=\nk\!\!}
-\node{\hbox{アクセント文字}}
-\node{\nk\!\!}
-\node{\hbox{アクセントのつく文字}}
+\item M: \IT{Nq}と\IT{Np}の間に入るJFM由来のglue/kern.
+\itemitem \IT{Nq}, \IT{Np}の間で|\inhibitglue|を発行した場合,挿入は抑止される.
+\itemitem 両方の塊で使われているJFMが(サイズもこめて)等しい場合は,両者で使われている
+JFMの情報をそのまま利用できるので,量の決定は容易い.
+\itemitem そうでなければ,まず
 $$
-となっている.p\TeX-3.2と同様に,Lua\TeX-jaでは|\[x]kanjiskip|挿入処理で
-アクセント文字は無視することにしている.そのため,
-\IT{nq}は変化せず,次回のループで処理対象となる\IT{np}は
-$\mibox{np}\leftarrow 
-\mibox{next\/}(\mibox{next\/}(\mibox{next\/}(\mibox{np})))$となる.
+\vcenter{\halign{\hfil$#:={}$&(\inhibitglue#\inhibitglue)\cr
+gb&\IT{Nq}と「文字コードが|'diffmet'|の文字」との間に入るglue/kern\cr
+ga&「文字コードが|'diffmet'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue/kern\cr
+}}
+$$
+として2つの量を計算.少なくとも片方が未定義の場合は,もう片方の値を用いる.
+そうでなければ,両者の値から自然長,伸び量,縮み量ごとに計算
+(方法として,平均,和,大きい方,小さい方)を行い,それによって得られたglue/kernを採用する.
+\item K: |\kanjiskip|を表すglueを挿入($\emptyset$にはならない).
+\itemitem 両方の塊において「|\kanjiskip|の自動挿入が無効」
+ ($\mibox{Nq.auto\_kspc}\vee \mibox{Np.auto\_kspc}=\bot$) ならば,長さ0のglueを挿入する.
+\itemitem {\sf kanjiskip}パラメタの自然長が$\hbox{\tt\char92maxdimen}=(2^{30}-1)\,{\rm sp}$で
+あれば,
+JFMに指定されている|\kanjiskip|の量を用いる.\IT{Nq}, \IT{Np}で使われているJFMが異なった時の処理は,
+Mの場合と同じである.
+\itemitem 上のどれにも当てはまらなければ,{\sf kanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する.
+\item X: |\xkanjiskip|を表すglueを挿入($\emptyset$にはならない).
+\itemitem 次のいずれかの場合には,|\xkanjiskip|は長さ0のglueとなる:
+\itemT  両方の塊において,「|\xkanjiskip|の自動挿入が無効」という指定
+($\mibox{Nq}.\mibox{auto\_xspc}\vee \mibox{Np}.\mibox{auto\_xspc}=\bot$)
+がされていた場合.
+\itemT \IT{Nq}内の文字について「直後への|\xkanjiskip|挿入が無効」であった場合,即ち
+$\hbox{\sf alxspmode}\ge 2$(欧文)か$\hbox{\sf jaxspmode}\equiv0\pmod2$(和文).
+\itemT \IT{Np}内の文字について「直前への|\xkanjiskip|挿入が無効」であった場合,即ち
+$\hbox{\sf alxspmode}\equiv0\pmod2$(欧文)か$\hbox{\sf jaxspmode}\ge2$(和文).
+\itemitem {\sf xkanjiskip}パラメタの自然長が|\maxdimen|であれば,
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$, $\mibox{head}(\mibox{Np})$の片方が和文文字であるので,
+そこで使われているJFMで指定されている|\xkanjiskip|の量を用いる
+(JFMで指定されていなければ長さ0のglueと見なされる).
+\itemitem 上のどれにも当てはまらなければ,{\sf xkanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する.
+\item $\rm O_B$: \IT{Nq}と「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」との間に入るglue.
+Mのバリエーションと考えればよく,同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される.
+\item $\rm O_A$: 「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue.
+Mのバリエーションと考えればよく,同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される.
 \enditem
 
-\beginparagraph \IT{np}が数式境界 (\IT{math\_node})の場合
-
-数式境界は,便宜的に「文字コードが$-1$である文字」とみなして内部で処理している.
 
-\beginparagraph その他の場合
+\beginparagraph penaltyまわりの処理
 
-以上に出てきていないnode(vbox, rule, discretionary break, glue, margin\_kern)の
-周囲には|\[x]kanjiskip|の挿入は行われない.
-
-\beginsection JFM由来グルーとの関係の例
+隣り合った塊\IT{Nq}, \IT{Np}の間には,集合\IT{Bp}で表される0個以上のpenaltyがあるのだった:
+$$
+\node{\mibox{Nq}}
+\Bigl[\node{\hbox{E}}_4\Bigr]
+\longrightarrow\cdots 
+\hbox{(penaltyある可能性あり)}\cdots
+\Bigl[\node{\hbox{M, K, X他}}_{3,\,5,\,6}\Bigr]
+\node{\mibox{Np}}
+$$
+禁則処理に関係するpenaltyの挿入処理は,以下に述べるところ部分は共通の動作である.
 
-最後に,今まで説明した,JFM由来グルーと|\[x]kanjiskip|の処理によって,実際にどのようにnodeの
-並びが変わるかをいくつかの例で示す.上付きで$*$がついているnodeは,値が0だと挿入されないことを示す.
+\medskip 
+$\#\mibox{Bp}\ge 1$の場合には,{\bf 全ての}\IT{Bp}の元$p$~(penalty)に対して次を行う:
+$$p.\mibox{penalty}\mathrel{+}=a,\qquad a:=\mibox{Nq.post}+\mibox{Np.pre}.$$
+\item
+全ての\IT{Bp}の元に対して行うのは,
+実際にはどのpenaltyの位置で行分割が行われるかがわからないからである.
+\item 数ページ前の表で,左下が「×」 or 「---」となっていた場合は,上の計算式において
+\IT{Nq.post}は0と扱われる.右下が「×」 or 「---」なら,\IT{Np.pre}が0と扱われる.
+\item penalty値の計算では,$+10000$は正の無限大,$-10000$は負の無限大として扱っている.
+そのため,$a$の計算や$p.\mibox{penalty}$への加算代入のところでは,
+通常の加減算で絶対値が10000を越えたら分はカットし,さらに$(10000)+(-10000)=0$としている.
+\enditem
 
+$\#\mibox{Bp}=0$の場合が,penalty挿入の3種類の方法「normal」「always」「suppress」で
+異なる部分である:
 
-\item {\bf 例1: 2つの連続する和文文字の間}
-\setbox1=\hbox{|\kanjiskip|}
-$$\ncount=0
-\vbox{\halign{$#$\hfil\cr
-\node{\hbox{和文文字}}\node{\hbox{和文文字}}
-\cr
-\hfil\Downarrow\cr
-\vadjust{\bigskip}
-\node{\hbox{和文文字}}
-\node{\nk w}_{\rm E}^*
-\node{\np P}^*\longrightarrow
-\left\{\vcenter{%
-\halign{$#$\hfil\cr
-\ncount=0\node{{\rm glue/kern}\ g+w}_{\rm J}\cr
-\ncount=0\node{\copy1+w}_{\rm KS}\cr
-}}\right\}
-\node{\hbox{和文文字}}\cr
-}}
+\item {\bf「normal」の場合:}
+次の場合に,$p.\mibox{penalty}=a$であるpenalty~$p$を作成し,
+それを(M, K他のglue挿入前に)\IT{Np.first}の直前に挿入する:
 $$
-
-\item {\bf 例2: 和文文字と欧文文字の間}
-\setbox1=\hbox{|\xkanjiskip|}
-$$\ncount=0
-\vbox{\halign{$#$\hfil\cr
-\node{\hbox{和文文字}}\node{\hbox{欧文文字}}
-\cr
-\hfil\Downarrow\cr
-\vadjust{\bigskip}
-\node{\hbox{和文文字}}
-\node{\nk w}_{\rm E}^*
-\node{\np P}\longrightarrow
-\left\{\vcenter{%
-\halign{$#$\hfil\cr
-\ncount=0\node{{\rm glue/kern}\ g+w}_{\rm J}\cr
-\ncount=0\node{\copy1+w}_{\rm XS}\cr
-}}\right\}^*
-\node{\hbox{欧文文字}}\cr
-}}
+\hbox{左空白(E)が存在しているか,$a\neq 0$かつ右空白がkernである.}
 $$
-ここで,上の2つの例に出てきた記号の意味は次の通り:
-\itemitem $w$: 前側の和文文字と行末の間に入るkern量.
-\itemitem $g$: 2つの文字の間に入るglue/kern(JFM由来).
-\itemitem $P$: 2つの文字の禁則用penaltyの合計値.
-
-
-\par\vfill\eject
-\item {\bf 例3: 2つの和文文字の間にいくつかの「無視される」node達}
-\setbox1=\hbox{|\kanjiskip|}
-$$\ncount=0
-\vbox{\halign{$\relax#$\hfil&$\relax#$\hfil\cr
-\node{\hbox{和字}\ A}&
-\ncount=1\node{\nk i_A}_{\rm I}
-\longrightarrow \cdots
-\node{\np p_B}
-\node{\hbox{和字}\ B}
-\cr
-\span\Downarrow\cr
-\vadjust{\bigskip}
-% T
-\node{\hbox{和字}\ A}&
-\ncount=1\node{\nk w_A}_{\rm E}^*
-\node{\np P_A}_{\rm K}^*
-\node{\nk {-w_A}}_{\rm T}^*
-\node{\nk i_A}_{\rm I}
-\longrightarrow \cdots\cr
-&\ncount=1\node{\np p_B}
-\node{\np P_B}^*\longrightarrow 
-\left\{\vcenter{%
-\halign{$#$\hfil\cr
-\ncount=0\node{{\rm glue/kern}\ g_B}_{\rm J}\cr
-\ncount=0\node{\copy1}_{\rm KS}\cr
-}}\right\}
-\node{\hbox{和字}\ B}\cr
-\span\hbox{or}\cr
-% T
-\node{\hbox{和字}\ A}&
-\ncount=1\node{\nk w_A}_{\rm E}^*
-\node{\np P_A}_{\rm K}^*
-\node{{\rm glue/kern}\ g_A-w_A}_{\rm J}
-\node{\nk i_A}_{\rm I}\cr
-&\ncount=1
-\longrightarrow \cdots
-\node{\np p_B}
-\node{\np P_B}
-\node{{\rm glue/kern}\ g_B}_{\rm J}^*
-\node{\hbox{和字}\ B}\cr
-}}
+\item {\bf「always」の場合:}
+この場合は,\IT{Nq}, \IT{Np}の間で常に行分割可能にしたいので,挿入する条件は以下のようになる:
 $$
-ここで,
-\itemitem $w_A$: 和文文字$A$と行末の間に入るkern量.
-\itemitem $P_A$: 和文文字$A$の行末禁則用penalty.
-\itemitem $g_A$: 和文文字$A$と|'jcharbdd'|との間に入るglue/kern.
-\itemitem $P_B$: 和文文字$B$の行頭禁則用penalty.
-\itemitem $g_B$: |'jcharbdd'|と和文文字$B$の間に入るglue/kern.
+\hbox{左空白(E)が存在しているか,右空白がglueでない(つまり,kernか未定義のとき).}
+$$
+
+\item {\bf「suppress」の場合:}このとき,\IT{Nq}と\IT{Np}の間での行分割は元々不可能である.
+Lua\TeX-ja では,そのような場合を「わざわざ行分割可能に」することはしない.
+つまり,右空白がglueであるとき,その直前に|\penalty 10000|を挿入する.
 \enditem
 
+\beginparagraph いくつかの例:未完
+
+\beginsection main loop その2: その他の場合
+
+\setbox1=\hbox{hp}\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.25em\relax depth \dimexpr \dp1+0.25em\relax}
+$$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
+\vcenter{\halign{\hfil\IT{#}\hfil\hskip1em\copy2%
+\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil%
+\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\cr
+\IT{Np}→&&id\_hlist 非文字\cr
+\IT{Nq}↓&$\mibox{head}(\mibox{Nq})$\rm: 欧文&id\_box\_like&id\_glue&id\_kern\cr
+\noalign{\vskip.25em\hrule\vskip.25em}
+id\_jglyph&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
+id\_pbox 和&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
+id\_hlist 和&\rm X${}^+$&---&---&---\cr
+他&---&---&---&---\cr
+}}$$
 
 \end