%%%%%%%%
\makeatletter
%%%%%%%%
+\def\pgfsysdriver{pgfsys-pdftex.def}
\directlua{if jit then jit.on() end}
\usepackage{metalogo,amsmath,array,tikz,pict2e,multienum,float}
\usepackage{booktabs,multicol,luatexja-ruby}
数式中の挙動は異なっているので注意が必要である.
例えば,表\ref{tab:math_bsa}のように,数式中に明示的に現れた \cs{hbox} は,
\begin{itemize}
- \item \pTeX では,ボックス全体が \cs{ybaselineshift} だとシフトされるので,
+ \item 2015年以前の\pTeX では,ボックス全体が \cs{ybaselineshift} だとシフトされるので,
表\ref{tab:math_bsa}中の``い''のように,ボックス中の和文文字は
\ \cs{ybaselineshift} だけシフトされ,一方,``for all''のように,
ボックス内の欧文文字は2重にシフトされることになる.
数式中に明示的に現れた \cs{hbox} はシフトしない.そのため,
表\ref{tab:math_bsa}中の``い''も``for all''も,それぞれ本文中に
書かれたときと同じ上下位置に組まれる.
+
+ なお,\TeX~Live~2016以降の\pTeX では改修がなされ,\LuaTeX-jaと
+ 近い挙動になるようにしているが,数式中に直に書かれた``あ''のベースラインについては
+ まだ違いが見られる.
\end{itemize}
\begin{table}
\small\centering
\end{lstlisting}\\
\noalign{\vskip-\origbaselineskip}
\midrule
-\emph{\pTeX}&
+\emph{\pTeX~(--2015)}&
{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
-数式abc: $あa\lower10pt\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
+数式abc: $\lower10pt\hbox{あ}a\lower10pt\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
$\Phi\vdash F(x)\ \lower10pt\hbox{for all}\ x\in A$
-\par}\\
-\midrule
+\par}\\\noalign{\vskip-\origbaselineskip}\midrule
+\emph{\pTeX~(2016--)}&
+{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
+数式abc: $\lower10pt\hbox{あ}a\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
+$\Phi\vdash F(x)\ \hbox{for all}\ x\in A$
+\par}\\\noalign{\vskip-\origbaselineskip}\midrule
\emph{\LuaTeX-ja}&
{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
数式abc: $あa\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
\begin{cslist}[style=standard]
+\item[version=$1\mathrel{\textrm{or}}2$]
+%<en>(optional, default value is~1)
+%<ja>(任意,既定値は1)
+
+%<*en>
+The version JFM. Currently 1~and~2 are supported
+%</en>
+%<*ja>
+JFMのバージョン.1または2がサポートされる.
+%</ja>
+
\item[dir=<direction>]
%<en>(required)
%<ja>(必須)
\item[end\_stretch=<kern>, end\_shrink=<kern>]
%<*ja>
-(任意)
+ï¼\88ä»»æ\84\8fï¼\8cã\83\90ã\83¼ã\82¸ã\83§ã\83³1ã\81®ã\81¿ï¼\89
優先順位付き行長調整が有効であり,かつ現在の文字クラスの文字が行
末に来た時に,行長を詰める調整・伸ばす調整のた
めにこの文字と行末の間に挿入可能なカーンの大きさを指定する.
%</ja>
+%<*en>
+(optional, version~1 only)
+%</en>
+
+ \item[end\_adjust=\{<kern>, <kern>, ...\}]
+%<*ja>
+(任意,バージョン2のみ)
+
+優先順位付き行長調整が有効であり,かつ現在の文字クラスの文字が
+ 行末に来た時に,この文字と行末の間には指定された値のいずれかの大きさのカーンが
+ 挿入される(\autoref{ssec-adj}参照).
+
+バージョン1における
+\begin{lstlisting}[escapechar=\$]
+ end_stretch = $a$, end_shrink = $b$
+\end{lstlisting}
+という指定は,バージョン2では次の指定と同じになる.
+\begin{lstlisting}[escapechar=\$]
+ end_adjust = {$-b$, 0.0, $a$}
+\end{lstlisting}
+もし真ん中の \texttt{0.0} がない場合は,$a$か$-b$かいずれかのカーンが常に行末に追加される.
+%</ja>
+%<*en>
+(optional, version~2 only)
+%</en>
\end{cslist}
\pTeX と同じようにJIS~X~0208の範囲しかサポートしていない.
%</ja>
\begin{center}
-\cs{kuten}, \cs{jis}, \cs{euc}, \cs{sjis}, \cs{jis}, \cs{kansuji}
+\cs{kuten}, \cs{jis}, \cs{euc}, \cs{sjis}, \cs{ucs}, \cs{kansuji}
\end{center}
%<*en>
These six commands takes an internal integer, and returns a \emph{string}.
%<*en>
\paragraph{IVS support}
Recent fonts support Ideographic Variation Selector (IVS).
-It seems that \Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages do not support
-IVS, so we implemented IVS support in \Pkg{luatexja-otf}.
-\emph{IVS support by the \Pkg{luatexja-otf} package is experimental.
-If you want to enable IVS support, load
-\Pkg{luatexja-otf} and execute the following:}
+\Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages used to be not supported IVS,
+so we implemented experimental IVS support in \Pkg{luatexja-otf},
+which is activated by
+\begin{lstlisting}
+\directlua{luatexja.otf.enable_ivs()}
+\end{lstlisting}
+However, recent \Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages seem to support IVS,
+so we don't execute above command anymore.
%</en>
%<*ja>
\paragraph{IVSサポート}
(漢字用異体字セレクタ)を後置することによって
字形を指定する仕組み(IVS)が含まれている.
執筆時点の2013年12月では,\Pkg{luaotfload}や\Pkg{fontspec}パッケージ類は
-IVSに対応してはいないようである.これらのパッケージで対応してくれるのが理想的だが,
-それまでのつなぎとして,\Pkg{luatexja-otf}パッケージ内にIVS対応を仕込んでおいた.
-
-\medskip
-
-\emph{\Pkg{luatexja-otf}によるIVS対応は試験的なものである.
-有効にするには,
-\Pkg{luatexja-otf}パッケージを読み込んだ上で以下の命令を実行する%
-\footnote{この命令を2回以上実行しても意味がない.}:}
-%</ja>
+IVSに対応してはいないようであったため,
+\Pkg{luatexja-otf}パッケージ内に試験的なIVS対応を実装した.これは以下の命令の実行で有効になる:
\begin{lstlisting}
\directlua{luatexja.otf.enable_ivs()}
\end{lstlisting}
-%<ja> すると,上の命令を実行した箇所以降では,以下のようにIVSによる字形指定が有効となる.
-%<en> After executing the command above, you can use IVS like the following:
-\begin{LTXexample}
-\Large
-\jfontspec{KozMinPr6N-Regular}
-奈良県葛󠄀城市と,東京都葛󠄁飾区.\\
-こんにちは,渡
-邉󠄀邉󠄁邉󠄂邉󠄃邉󠄄
-邉󠄅邉󠄆邉󠄇邉󠄈邉󠄉
-邉󠄊邉󠄋邉󠄌邉󠄍邉󠄎
-さん.
-\end{LTXexample}
-%<*ja>
-左上側の入力においては,漢字用異体字セレクタを明示するため,
-例えばVariation~Selector~18 (\texttt{U+E0101})を\IVSB{18}のように表記している.
+しかし,現在の\Pkg{luaotfload}や\Pkg{fontspec}パッケージは
+IVSに対応しているようであるので,もはや上の命令を実行する必要はない.
%</ja>
-\medskip
-
-%<*en>
-Specifying glyph variants by IVS precedes glyph replacement by font features.
-For example, only ``葛'' in ``葛西'' is changed by font features
-\texttt{jp78}~or~\texttt{jp90}, which does not followed by any variation selector.
-%</en>
-%<*ja>
-また,IVSによる字形指定は,OpenType機能によるそれに優先されることとした.
-下の例において,\texttt{jp78}, \texttt{jp90} 指定で字形が変化した文字は
-異体字セレクタが続いていない「葛西」中の「葛」のみである.
-%</ja>
-\begin{LTXexample}
- \def\TEST#1{%
- {\jfontspec[#1]{KozMinPr6N-Regular}%
- 葛󠄀城市,葛󠄁飾区,葛西}\\}
- 指定なし:\TEST{}
- \texttt{jp78}:\TEST{CJKShape=JIS1978}
- \texttt{jp90}:\TEST{CJKShape=JIS1990}
-\end{LTXexample}
-
-%<*ja>
-現状では,\TeX 側のインターフェースとなる \Pkg{luatexja-otf.sty} は一切変更していない
-ので,ZRさんによる\Pkg{PXipamjm}パッケージ%
-\footnote{\url{https://github.com/zr-tex8r/PXipamjm}. 説明は彼のブログ記事
-「pxipamjm パッケージの説明書のような何か(\url{http://d.hatena.ne.jp/zrbabbler/20131221})」
-にある.}
-にあるような気の利いた命令はまだない.
-異体字の一覧表示を行いたい場合は,gitリポジトリ内の \texttt{test/test19-ivs.tex} 中にある
-Lua・\TeX コードが参考になるだろう.
-%</ja>
-
\subsection{\Pkg{luatexja-adjust}}
\label{ssec-adj}
\end{itemize}
-\Pkg{luatexja-adjust} は,以下の命令を提供する.これらはすべてグローバルに効力を発揮する.
+\Pkg{luatexja-adjust}は,以下の命令を提供する.これらはすべてグローバルに効力を発揮する.
\begin{cslist}
\item[\cs{ltjdisableadjust}]
%<*ja>
\section{和文の行長補正方法}
\label{sec-adjspec}
-\Pkg{luatexja-adjust} で提供される優先順位付きの行長調整の詳細を述
+\Pkg{luatexja-adjust}で提供される優先順位付きの行長調整の詳細を述
べる.大まかに述べると,次のようになる.
\begin{itemize}
\item 通常の\TeX の行分割方法に従って,段落を行分割する.この段階では,行
\paragraph{準備:合計伸縮量の計算}
グルーの伸縮度(\texttt{plus} や \texttt{minus} で指定されている値)には,
有限値の他に,\texttt{fi},\texttt{fil},\texttt{fill},\texttt{filll}と
-いう4つの無限大レベル(後ろの方ほど大きい)があり,行の調整に
-\texttt{fi} などの\emph{無限大レベルの伸縮度が用いられている場合は,そ
-の行に対しての処理を中止}する.
-
-よって,以降,問題にしている行の行長調整は伸縮度が有限長のグルーを用いて
-行われているとして良い.さらに,簡単のため,この行はグルーが広げられている
-(自然長で組むと望ましい行長よりの短い)場合しか扱わない.
+いう4つの無限大レベル(後ろの方ほど大きい)がある.行の調整に
+\texttt{fi} などの\emph{無限大レベルの伸縮度が用いられている行では,
+「行末文字の位置調整」のみ行い,「グルーの調整」は行わない.}
まず,段落中の行中のグルーを
\begin{itemize}
\item 和欧文間空白(\Param{xkanjiskip})
\item 和文間空白(\Param{kanjiskip})
\end{itemize}
-の$1+1+5+1=8$つに類別し,それぞれの種別ごとに
-許容されている伸び量(\texttt{stretch}の値)の合計を計算する.
-また,行長と自然長との差を\textit{total}とおく.
-
+の$1+1+5+1=8$つに類別する.
+そして許容されている伸び量(\texttt{stretch}の値)の合計を
+無限のレベルごとに
+\begin{align*}
+ T^{+}_{l}&:= \sum_{\text{$\texttt{stretch\_order}(p) = l$}} \texttt{stretch}(p),&
+ l\in \{\text{(finite)}, \texttt{fi}, \texttt{fil}, \texttt{fill}, \texttt{filll}\}
+\end{align*}
+と計算する.さらに,
+\begin{align*}
+T^{+}&:=T^{+}_{L^+},&L^{+} = \max \{l\in
+ \{\text{(finite)}, \texttt{fi}, \texttt{fil}, \texttt{fill}, \texttt{filll}\}:
+ T^{+}_l\neq 0\}
+\end{align*}
+とおく.有限の伸び量については,上記の8種類の類別ごとにも合計を計算する.
+さらに縮み量(\texttt{shrink}の値)についても同様の処理を行い,$T^{-}$を計算する.
+
+また,行長から自然長を引いた値を\textit{total}とおく.
\subsection{行末文字の位置調整}
行末が文字クラス$n$の\textbf{JAchar}であった場合,
-それを動かすことによって,\textit{total}のうち
-\textbf{JAglue}が負担する分を少なくしようとする.
-この行末文字の左右の移動可能量は,
-JFM中にある文字クラス$n$の定義の
-\texttt{end\_stretch},~\texttt{end\_shrink}フィールドに
-全角単位の値として記述されている.
-
-例えば,行末文字が句点「。」であり,そこで用いられているJFM中に
-\begin{lstlisting}
- [2] = {
- chars = { '。', ... }, width = 0.5, ...,
- end_stretch = 0.5, end_shrink = 0.5,
- },
-\end{lstlisting}
-という指定があった場合,この行末の句点は
-\begin{itemize}
-\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の詰め」が行われていた場合,
-この行中の\textbf{JAglue}の負担を軽減するため,
-行末の句点を半角だけ右に移動する(ぶら下げ組を行う).
-\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の空き」が行われていた場合,
-逆に行末句点を半角左に移動させる(見た目的に全角取りとなる).
-\item 以上のどちらでもない場合,行末句点の位置調整は行わない.
-\end{itemize}
-となる.
+\texttt{end\_adjust} の値のいずれかだけこの文字の位置を移動させる.
-行末文字を移動した場合,その分だけ\textit{total}の値を引いておく.
+\begin{quote}
+ \texttt{end\_adjust = \{$a_{1}$, $a_{2}$, ..., $a_{n}$\}}
+\end{quote}
+であったとする.各$1\leq i\leq n$に対して,
+「行末に$a_{i}$全角だけのカーンを追加した時の,\textit{glue\_set}の値」を
+$b_{i}$とおく.式で書くと,
+\[
+\catcode`\<=12
+b_{i} = \begin{cases}
+ |\textit{total}-a_{i}\cdot \text{\cs{zw}}|/T^{+}
+ &(\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}\geq 0)\\
+ |\textit{total}-a_{i}\cdot \text{\cs{zw}}|/T^{-}
+ &(\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}<0)
+\end{cases}.
+\]
+$b_{i}$達の最小値を与えるような$i$を$j$としたとき\footnote{%
+ そのような$i$が2つ以上あるときは,$|\textit{total}-a_{i}\cdot \text{\cs{zw}}|$,
+ $|a_{i}|$, $a_i$の順で比較して一番小さくなるものが選ばれる.
+},
+行末に大きさ$a_{j}$のカーンを追加する.
+\textit{total}から$a_{j}$全角の大きさだけ引いておく.
\subsection{グルーの調整}
-\textit{total}の分だけが,行中のグルーの伸び量に応じて負担されることになる.
+$|\textit{total}|$の分だけが,行中のグルーの伸び量に応じて負担されることになる.
+以下,$\textit{total}\geq 0$であると仮定して話を進めるが,負のときも同様である.
負担するグルーの優先度は以下の順であり,
できるだけ\Param{kanjiskip}を自然長のままにすることを
試みている.
[0]=37001, -- <9089 E0100>
991049, -- <9089 E0101>
...
- ["vert"]=995025, -- vertical variant
+ ["vform"]=995025, -- vertical variant
},
...
+ ["unicodes"]={
+ ["aj102.pe.vert"]=984163, -- glyph name to unicode
+ ...
+ }
},
["chksum"]="FFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFF", -- checksum of the fontfile
- ["version"]=2, -- version of the cache
+ ["version"]=11, -- version of the cache
}
\end{lstlisting}
%<*ja>