%%%%%%%%
\makeatletter
%%%%%%%%
+\def\pgfsysdriver{pgfsys-pdftex.def}
\directlua{if jit then jit.on() end}
\usepackage{metalogo,amsmath,array,tikz,pict2e,multienum,float}
\usepackage{booktabs,multicol,luatexja-ruby}
%<en>The following packages are needed for the \LuaTeX-ja\ package.
%<ja>\LuaTeX-jaパッケージの動作には次のパッケージ類が必要である.
\begin{itemize}
-\item \LuaTeX\ beta-0.80.0 (or later)
-\item \Pkg{luaotfload} v2.5 (or later)
+\item \LuaTeX\ beta-0.85.0 (or later)
+\item \Pkg{luaotfload} v2.6 (or later)
\item \Pkg{adobemapping} (Adobe cmap and pdfmapping files)
\item \Pkg{everysel} (if you want to use \LuaTeX-ja with \LaTeXe)
\item \Pkg{fontspec} v2.4
%<en>\item \emph{IPAex fonts} (\url{http://ipafont.ipa.go.jp/})
%<ja>\item \emph{IPAexフォント(\url{http://ipafont.ipa.go.jp/})}
\end{itemize}
-%<en>In summary, this version of \LuaTeX-ja no longer supports \TeX~Live~2014 (or older version).
+%<en>In summary, this version of \LuaTeX-ja no longer supports \TeX~Live~2015 (or older version).
%<*ja>
-要約すると,本バージョンの\LuaTeX-jaは\TeX~Live~2014以前では動作しない\footnote{%
+要約すると,本バージョンの\LuaTeX-jaは\TeX~Live~2015以前では動作しない\footnote{%
もっとも,自分で\LuaTeX のバイナリをSubversionリポジトリからビルドしていれば話は別である.
}.
%</ja>
数式中の挙動は異なっているので注意が必要である.
例えば,表\ref{tab:math_bsa}のように,数式中に明示的に現れた \cs{hbox} は,
\begin{itemize}
- \item \pTeX では,ボックス全体が \cs{ybaselineshift} だとシフトされるので,
+ \item 2015年以前の\pTeX では,ボックス全体が \cs{ybaselineshift} だとシフトされるので,
表\ref{tab:math_bsa}中の``い''のように,ボックス中の和文文字は
\ \cs{ybaselineshift} だけシフトされ,一方,``for all''のように,
ボックス内の欧文文字は2重にシフトされることになる.
数式中に明示的に現れた \cs{hbox} はシフトしない.そのため,
表\ref{tab:math_bsa}中の``い''も``for all''も,それぞれ本文中に
書かれたときと同じ上下位置に組まれる.
+
+ なお,\TeX~Live~2016以降の\pTeX では改修がなされ,\LuaTeX-jaと
+ 近い挙動になるようにしているが,数式中に直に書かれた``あ''のベースラインについては
+ まだ違いが見られる.
\end{itemize}
\begin{table}
\small\centering
\end{lstlisting}\\
\noalign{\vskip-\origbaselineskip}
\midrule
-\emph{\pTeX}&
+\emph{\pTeX~(--2015)}&
{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
-数式abc: $あa\lower10pt\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
+数式abc: $\lower10pt\hbox{あ}a\lower10pt\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
$\Phi\vdash F(x)\ \lower10pt\hbox{for all}\ x\in A$
-\par}\\
-\midrule
+\par}\\\noalign{\vskip-\origbaselineskip}\midrule
+\emph{\pTeX~(2016--)}&
+{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
+数式abc: $\lower10pt\hbox{あ}a\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
+$\Phi\vdash F(x)\ \hbox{for all}\ x\in A$
+\par}\\\noalign{\vskip-\origbaselineskip}\midrule
\emph{\LuaTeX-ja}&
{\ltjsetparameter{yalbaselineshift=10pt}%
数式abc: $あa\hbox{い}$, $\int_0^x t\,dt=x^2/2$,
\begin{cslist}[style=standard]
+\item[version=$1\mathrel{\textrm{or}}2$]
+%<en>(optional, default value is~1)
+%<ja>(任意,既定値は1)
+
+%<*en>
+The version JFM. Currently 1~and~2 are supported
+%</en>
+%<*ja>
+JFMのバージョン.1または2がサポートされる.
+%</ja>
+
\item[dir=<direction>]
%<en>(required)
%<ja>(必須)
\item[end\_stretch=<kern>, end\_shrink=<kern>]
%<*ja>
-(任意)
+ï¼\88ä»»æ\84\8fï¼\8cã\83\90ã\83¼ã\82¸ã\83§ã\83³1ã\81®ã\81¿ï¼\89
優先順位付き行長調整が有効であり,かつ現在の文字クラスの文字が行
末に来た時に,行長を詰める調整・伸ばす調整のた
めにこの文字と行末の間に挿入可能なカーンの大きさを指定する.
%</ja>
+%<*en>
+(optional, version~1 only)
+%</en>
+
+ \item[end\_adjust=\{<kern>, <kern>, ...\}]
+%<*ja>
+(任意,バージョン2のみ)
+
+優先順位付き行長調整が有効であり,かつ現在の文字クラスの文字が
+ 行末に来た時に,この文字と行末の間には指定された値のいずれかの大きさのカーンが
+ 挿入される(\autoref{ssec-adj}参照).
+
+バージョン1における
+\begin{lstlisting}[escapechar=\$]
+ end_stretch = $a$, end_shrink = $b$
+\end{lstlisting}
+という指定は,バージョン2では次の指定と同じになる.
+\begin{lstlisting}[escapechar=\$]
+ end_adjust = {$-b$, 0.0, $a$}
+\end{lstlisting}
+もし真ん中の \texttt{0.0} がない場合は,$a$か$-b$かいずれかのカーンが常に行末に追加される.
+%</ja>
+%<*en>
+(optional, version~2 only)
+%</en>
\end{cslist}
\pTeX と同じようにJIS~X~0208の範囲しかサポートしていない.
%</ja>
\begin{center}
-\cs{kuten}, \cs{jis}, \cs{euc}, \cs{sjis}, \cs{jis}, \cs{kansuji}
+\cs{kuten}, \cs{jis}, \cs{euc}, \cs{sjis}, \cs{ucs}, \cs{kansuji}
\end{center}
%<*en>
These six commands takes an internal integer, and returns a \emph{string}.
%<*en>
\paragraph{IVS support}
Recent fonts support Ideographic Variation Selector (IVS).
-It seems that \Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages do not support
-IVS, so we implemented IVS support in \Pkg{luatexja-otf}.
-\emph{IVS support by the \Pkg{luatexja-otf} package is experimental.
-If you want to enable IVS support, load
-\Pkg{luatexja-otf} and execute the following:}
+\Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages used to be not supported IVS,
+so we implemented experimental IVS support in \Pkg{luatexja-otf},
+which is activated by
+\begin{lstlisting}
+\directlua{luatexja.otf.enable_ivs()}
+\end{lstlisting}
+However, recent \Pkg{luaotfload} and \Pkg{fontspec} packages seem to support IVS,
+so we don't execute above command anymore.
%</en>
%<*ja>
\paragraph{IVSサポート}
(漢字用異体字セレクタ)を後置することによって
字形を指定する仕組み(IVS)が含まれている.
執筆時点の2013年12月では,\Pkg{luaotfload}や\Pkg{fontspec}パッケージ類は
-IVSに対応してはいないようである.これらのパッケージで対応してくれるのが理想的だが,
-それまでのつなぎとして,\Pkg{luatexja-otf}パッケージ内にIVS対応を仕込んでおいた.
-
-\medskip
-
-\emph{\Pkg{luatexja-otf}によるIVS対応は試験的なものである.
-有効にするには,
-\Pkg{luatexja-otf}パッケージを読み込んだ上で以下の命令を実行する%
-\footnote{この命令を2回以上実行しても意味がない.}:}
-%</ja>
+IVSに対応してはいないようであったため,
+\Pkg{luatexja-otf}パッケージ内に試験的なIVS対応を実装した.これは以下の命令の実行で有効になる:
\begin{lstlisting}
\directlua{luatexja.otf.enable_ivs()}
\end{lstlisting}
-%<ja> すると,上の命令を実行した箇所以降では,以下のようにIVSによる字形指定が有効となる.
-%<en> After executing the command above, you can use IVS like the following:
-\begin{LTXexample}
-\Large
-\jfontspec{KozMinPr6N-Regular}
-奈良県葛󠄀城市と,東京都葛󠄁飾区.\\
-こんにちは,渡
-邉󠄀邉󠄁邉󠄂邉󠄃邉󠄄
-邉󠄅邉󠄆邉󠄇邉󠄈邉󠄉
-邉󠄊邉󠄋邉󠄌邉󠄍邉󠄎
-さん.
-\end{LTXexample}
-%<*ja>
-左上側の入力においては,漢字用異体字セレクタを明示するため,
-例えばVariation~Selector~18 (\texttt{U+E0101})を\IVSB{18}のように表記している.
-%</ja>
-\medskip
-
-%<*en>
-Specifying glyph variants by IVS precedes glyph replacement by font features.
-For example, only ``葛'' in ``葛西'' is changed by font features
-\texttt{jp78}~or~\texttt{jp90}, which does not followed by any variation selector.
-%</en>
-%<*ja>
-また,IVSによる字形指定は,OpenType機能によるそれに優先されることとした.
-下の例において,\texttt{jp78}, \texttt{jp90} 指定で字形が変化した文字は
-異体字セレクタが続いていない「葛西」中の「葛」のみである.
-%</ja>
-\begin{LTXexample}
- \def\TEST#1{%
- {\jfontspec[#1]{KozMinPr6N-Regular}%
- 葛󠄀城市,葛󠄁飾区,葛西}\\}
- 指定なし:\TEST{}
- \texttt{jp78}:\TEST{CJKShape=JIS1978}
- \texttt{jp90}:\TEST{CJKShape=JIS1990}
-\end{LTXexample}
-
-%<*ja>
-現状では,\TeX 側のインターフェースとなる \Pkg{luatexja-otf.sty} は一切変更していない
-ので,ZRさんによる\Pkg{PXipamjm}パッケージ%
-\footnote{\url{https://github.com/zr-tex8r/PXipamjm}. 説明は彼のブログ記事
-「pxipamjm パッケージの説明書のような何か(\url{http://d.hatena.ne.jp/zrbabbler/20131221})」
-にある.}
-にあるような気の利いた命令はまだない.
-異体字の一覧表示を行いたい場合は,gitリポジトリ内の \texttt{test/test19-ivs.tex} 中にある
-Lua・\TeX コードが参考になるだろう.
+しかし,現在の\Pkg{luaotfload}や\Pkg{fontspec}パッケージは
+IVSに対応しているようであるので,もはや上の命令を実行する必要はない.
%</ja>
-
\subsection{\Pkg{luatexja-adjust}}
\label{ssec-adj}
\begin{figure}[t]
(see Japanese version of this manual)
%</en>
%<*ja>
+この追加パッケージは以下の機能を提供する.詳細な仕様については\ref{sec-adjspec}章を参照してほしい.
+\begin{description}
+\item[行末文字の位置調整]
+ \pTeX では,(是非はともかく)「行末の読点はぶら下げか二分取りか全角取りのいずれかに」のように
+ 行末文字と実際の行末の位置関係を2通り以上にすることは面倒であった.
+ 和文フォントメトリックだけでは「常に行末の読点はぶら下げ」といったことしかできず,
+ 前の文に書いたことを実現するには
+\begin{lstlisting}
+\def\。{%
+ \penalty10000 % 禁則ペナルティ
+ \hbox to0pt{。\hss}\penalty0 % ぶら下げの場合
+ \kern.5\zw\penalty0 % 二分取りの場合
+ \kern.5\zw\penalty0 % 全角取りの場合
+}
+\end{lstlisting}
+ のような命令を定義し,文中の全ての句点を \lstinline+\。+ で書くことが必要だった.
+
+\Pkg{luatexja-adjust}パッケージは,上で述べた行末文字と実際の行末との位置関係を
+2通り以上から自動的に選択する機能を提供する.
+\pdfTeX と同じように,「\TeX による行分割の後で行末文字の位置を補正する」方法と
+ 「行分割の過程で行末文字の位置を考慮に入れる」方法を選べるようにした(
+\Pkg{luatexja-adjust}パッケージの既定では前者).
+
+\item[優先順位付きの行長調整]
\pTeX では,行長調整において優先度の概念が存在しなかったため,図
\ref{fig-adj}上段における半角分の半端は,図\ref{fig-adj}中段のように,鍵
括弧周辺の空白と和文間空白(\Param{kanjiskip})の両方によって負担される.し
かし,「日本語組版処理の要件」\cite{jlreq}やJIS~X~4051~\cite{x4051}におい
ては,このような状況では半端は鍵括弧周辺の空白のみで負担し,その他の和文
-文字はベタ組で組まれる(図\ref{fig-adj}下段)ことになっている.この追加
-パッケージは\cite{jlreq}や\cite{x4051}における規定のような,優先順位付き
-の行長調整を提供する.詳細な仕様については\ref{sec-adjspec}章を参照してほしい.
+文字はベタ組で組まれる(図\ref{fig-adj}下段)ことになっている.
+\Pkg{luatexja-adjust}パッケージの提供する第2の機能は,
+\cite{jlreq}や\cite{x4051}における規定のような,優先順位付き
+の行長調整である.
\begin{itemize}
\item 優先度付き行長調整は,段落を行分割した後に個々の行について行われるものである.
そのため,行分割の位置は変化することはない.
-また,\verb+\hbox to ... {...}+ のような「幅が指定されたhbox」では無効である.
+\verb+\hbox{...}+ といった「途中で改行できない水平ボックス」では(たとえ幅が指定されていても)無効である.
\item 優先度付き行長調整を行うと,和文処理グルーの自然長は変化しないが,伸び量や縮み量は
一般に変化する.そのため,既に組まれた段落を \cs{unhbox} などを利用して組み直す処理を
行う場合には注意が必要である.
\end{itemize}
+\end{description}
-
-\Pkg{luatexja-adjust} は,以下の命令を提供する.これらはすべてグローバルに効力を発揮する.
+\Pkg{luatexja-adjust}パッケージは,上記で述べた2機能を有効化/無効化するための
+以下の命令を提供する.これらはすべてグローバルに効力を発揮する.
\begin{cslist}
-\item[\cs{ltjdisableadjust}]
-優先順位付きの行長調整を無効化する.
+\item[\cs{ltjenableadjust[...]}]
+\verb+...+ に指定したkey-valueリストに従い,「行末文字の位置調整」「優先順位付きの行長調整」を有効化/無効化する.
+指定できるキーは以下の通り.
+\begin{description}
+ \item[\texttt{lineend=[false,true,extended]}]
+ 行末文字の位置調整の機能を無効化(\texttt{false}),「行分割後に調整」の形で有効化(\texttt{true}),
+ 「行分割の仮定で考慮」(\texttt{extended})する.
+ \item[\texttt{priority=[false,true]}]
+ 優先順位付きの行長調整を無効化(\texttt{false}),または有効化(\texttt{true})する.
+\end{description}
+両キーともキー名のみを指定した場合は値として\texttt{true}が指定されたものと扱われる.
-\item[\cs{ltjenableadjust}]
-優先順位付きの行長調整を有効化する.
+互換性の為,オプション無しでただ\cs{ltjenableadjust}が呼び出された場合は,
+\begin{lstlisting}
+\ltjenableadjust[lineend=true,priority=true]
+\end{lstlisting}
+と扱われる.
+
+\item[\cs{ltjdisableadjust}]
+\Pkg{luatexja-adjust}パッケージの機能を無効化する.
+\begin{lstlisting}
+\ltjenableadjust[lineend=false,priority=false]
+\end{lstlisting}
+と同義.
-\item[\textsf{adjust}\,=<bool>] \cs{ltjsetparameter} で指定可能な追加パラメータであり,
-<bool>が\textit{true}なら \cs{ltjenableadjust} を,
-そうでなければ \cs{ltjdisableadjust} を実行する.
\end{cslist}
%</ja>
%<*ja>
\section{和文の行長補正方法}
\label{sec-adjspec}
-\Pkg{luatexja-adjust} で提供される優先順位付きの行長調整の詳細を述
-べる.大まかに述べると,次のようになる.
+\Pkg{luatexja-adjust}で提供される優先順位付きの行長調整の詳細を大まかに述べると,次のようになる.
\begin{itemize}
+\item (\texttt{lineend=extended}の場合)\textbf{JAglue}の挿入処理のところで,
+ ……
\item 通常の\TeX の行分割方法に従って,段落を行分割する.この段階では,行
長に半端が出た場合,その半端分は\textbf{JAglue}(\Param{xkanjiskip},
\Param{kanjiskip},JFMグルー)と
それ以外のグルーの全てで(優先順位なく)負担される.
\item その後,\texttt{post\_linebreak\_filter} callbackを使い,\emph{段
- 落中の各行ごとに},行末文字の位置を調整したり,優先度付きの行長調整
+ 落中の各行ごとに},行末文字の位置を調整(\texttt{lineend=true}の場合)したり,優先度付きの行長調整
を実現するためにグルーの伸縮度を調整する.
その処理においては,グルーの自然長と\textbf{JAglue}以外の
グルーの伸び量・縮み量は変更せず,必要に応じて\textbf{JAglue}の伸び量・縮み量のみを
変更する設計とした.
-
-\Pkg{luatexja-adjust} の作用は,この処理を行うcallbackを追加するだけであり,
- この章の残りではcallbackでの処理について解説する.
\end{itemize}
+この章の残りでは各処理について解説する.
\paragraph{準備:合計伸縮量の計算}
グルーの伸縮度(\texttt{plus} や \texttt{minus} で指定されている値)には,
有限値の他に,\texttt{fi},\texttt{fil},\texttt{fill},\texttt{filll}と
-いう4つの無限大レベル(後ろの方ほど大きい)があり,行の調整に
-\texttt{fi} などの\emph{無限大レベルの伸縮度が用いられている場合は,そ
-の行に対しての処理を中止}する.
-
-よって,以降,問題にしている行の行長調整は伸縮度が有限長のグルーを用いて
-行われているとして良い.さらに,簡単のため,この行はグルーが広げられている
-(自然長で組むと望ましい行長よりの短い)場合しか扱わない.
+いう4つの無限大レベル(後ろの方ほど大きい)がある.行の調整に
+\texttt{fi} などの\emph{無限大レベルの伸縮度が用いられている行では,
+「行末文字の位置調整」のみ行い,「グルーの調整」は行わない.}
まず,段落中の行中のグルーを
\begin{itemize}
\item 和欧文間空白(\Param{xkanjiskip})
\item 和文間空白(\Param{kanjiskip})
\end{itemize}
-の$1+1+5+1=8$つに類別し,それぞれの種別ごとに
-許容されている伸び量(\texttt{stretch}の値)の合計を計算する.
-また,行長と自然長との差を\textit{total}とおく.
-
-
-\subsection{行末文字の位置調整}
-行末が文字クラス$n$の\textbf{JAchar}であった場合,
-それを動かすことによって,\textit{total}のうち
-\textbf{JAglue}が負担する分を少なくしようとする.
-この行末文字の左右の移動可能量は,
-JFM中にある文字クラス$n$の定義の
-\texttt{end\_stretch},~\texttt{end\_shrink}フィールドに
-全角単位の値として記述されている.
+の$1+1+5+1=8$つに類別する.
+そして許容されている伸び量(\texttt{stretch}の値)の合計を
+無限のレベルごとに
+\begin{align*}
+ T^{+}_{l}&:= \sum_{\text{$\texttt{stretch\_order}(p) = l$}} \texttt{stretch}(p),&
+ l\in \{\text{(finite)}, \texttt{fi}, \texttt{fil}, \texttt{fill}, \texttt{filll}\}
+\end{align*}
+と計算する.さらに,
+\begin{align*}
+T^{+}&:=T^{+}_{L^+},&L^{+} = \max \{l\in
+ \{\text{(finite)}, \texttt{fi}, \texttt{fil}, \texttt{fill}, \texttt{filll}\}:
+ T^{+}_l\neq 0\}
+\end{align*}
+とおく.有限の伸び量については,上記の8種類の類別ごとにも合計を計算する.
+さらに縮み量(\texttt{shrink}の値)についても同様の処理を行い,$T^{-}$を計算する.
+
+また,行長から自然長を引いた値を\textit{total}とおく.
+
+\subsection{行末文字の位置調整(行分割後の場合)}
+行末が\textbf{JAchar}であり,この文字の属する文字クラスでは
+\begin{quote}
+ \texttt{end\_adjust = \{$a_{1}$, $a_{2}$, ..., $a_{n}$\}}
+\end{quote}
+であったとする.
+このとき,以下の条件を満たした場合,
+この文字クラスに対する\texttt{end\_adjust}の値のいずれかだけこの文字の位置を移動させる.
+\begin{description}
+ \item[最終行以外] 行長調整に無限大の伸縮度が用いられていない.
+ すなわち,$\textit{total}>0$ならば$L^{+}=(\text{finite})$であり,
+ $\textit{total}>0$ならば$L^{-}=(\text{finite})$である.
+ \item[最終行] 行長調整に無限大に伸び縮みするグルーが用いられたなら,それは\cs{parfillskip}のみであり,
+ かつ,次の不等式が成立する:
+ \[
+ \min\{0,a_{1}\}\text{\cs{zw}}\leq (\text{\cs{parfillskip}の実際の長さ}) \leq \max\{0,a_{n}\}\text{\cs{zw}}
+ \]
+\end{description}
-例えば,行末文字が句点「。」であり,そこで用いられているJFM中に
-\begin{lstlisting}
- [2] = {
- chars = { '。', ... }, width = 0.5, ...,
- end_stretch = 0.5, end_shrink = 0.5,
- },
-\end{lstlisting}
-という指定があった場合,この行末の句点は
-\begin{itemize}
-\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の詰め」が行われていた場合,
-この行中の\textbf{JAglue}の負担を軽減するため,
-行末の句点を半角だけ右に移動する(ぶら下げ組を行う).
-\item 通常の\TeX の行分割処理で「半角以上の空き」が行われていた場合,
-逆に行末句点を半角左に移動させる(見た目的に全角取りとなる).
-\item 以上のどちらでもない場合,行末句点の位置調整は行わない.
-\end{itemize}
-となる.
+各$1\leq i\leq n$に対して,
+「行末に$a_{i}$全角だけのカーンを追加した時の,\textit{glue\_set}の値」を
+$b_{i}$とおく.式で書くと,
+\[
+\catcode`\<=12
+b_{i} = \begin{cases}
+ |\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}|/T^{+}
+ &(\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}\geq 0)\\
+ |\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}|/T^{-}
+ &(\textit{total}-a_{i}\text{\cs{zw}}<0)
+\end{cases}.
+\]
+$b_{i}$達の最小値を与えるような$i$を$j$としたとき\footnote{%
+ そのような$i$が2つ以上あるときは,$|\textit{total}-a_{i}\cdot \text{\cs{zw}}|$,
+ $|a_{i}|$, $a_i$の順で比較して一番小さくなるものが選ばれる.
+},
+行末に大きさ$a_{j}$のカーンを追加する.
+\textit{total}から$a_{j}$全角の大きさだけ引いておく.
-行末文字を移動した場合,その分だけ\textit{total}の値を引いておく.
+\subsection{行末文字の位置調整(行分割での考慮)}
+未完.最終行!
\subsection{グルーの調整}
-\textit{total}の分だけが,行中のグルーの伸び量に応じて負担されることになる.
+$|\textit{total}|$の分だけが,行中のグルーの伸び量に応じて負担されることになる.
+以下,$\textit{total}\geq 0$であると仮定して話を進めるが,負のときも同様である.
負担するグルーの優先度は以下の順であり,
できるだけ\Param{kanjiskip}を自然長のままにすることを
試みている.
[0]=37001, -- <9089 E0100>
991049, -- <9089 E0101>
...
- ["vert"]=995025, -- vertical variant
+ ["vform"]=995025, -- vertical variant
},
...
+ ["unicodes"]={
+ ["aj102.pe.vert"]=984163, -- glyph name to unicode
+ ...
+ }
},
["chksum"]="FFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFFF", -- checksum of the fontfile
- ["version"]=2, -- version of the cache
+ ["version"]=11, -- version of the cache
}
\end{lstlisting}
%<*ja>