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Bugfix and speed up lltjp-listings.sty.
[luatex-ja/luatexja.git] / doc / jfmglue.tex
index b76891c..d44ee51 100644 (file)
@@ -6,12 +6,16 @@
   \setbox0=\hbox{\kern.5em$\mathstrut#1$\kern.5em}\dp0=0pt
   \hbox{\vrule
     $\vcenter{\hsize=\wd0\hrule\kern.5ex\copy0\kern.5ex\hrule}$%
-    \vrule\kern.1em}}
+    \vrule\kern.1em}{}}
 \def\nk{{\rm kern}\ }
 \def\ng{{\rm glue}\ }
 \def\np{{\rm penalty}\ }
 \def\z{\,{\rm zw}}
 \jfont\tenmini={file:ipam.ttf:slant=0.5;jfm=ujis} at 13\jQ
+\def\mibox#1{\hbox{\it #1\/}}\def\IT#1{{\it #1\/}}
+\ltjsetparameter{alxspmode={`\$,allow}}
+\ltjsetparameter{alxspmode={`\\,allow}}
+\ltjsetparameter{alxspmode={`\',allow}}
 
 \centerline{\big Lua\TeX-ja 和文処理グルーについて}\bigskip
 \centerline{\large\the\year/\the\month/\the\day}\medskip
 本文書では,Lua\TeX-jaが(現時点において)和文処理に関わるglue/kernを
 どのように挿入するかの内部処理について説明する.
 
+\bigskip
+{\large\bf\noindent これは仕様・内部処理の提案の1つにしかすぎません.最終的にこのようになる
+保証はどこにもありませんし,現時点でのLuaコードが本文書に従っている保証もありません.
+バグが混入している可能性も大きいです.}
+
 \beginsection 予備知識
 
 説明に入る前に,段落やhboxの中身は,\TeX の内部ではnode達による
 リストとして表現されていることに注意する.nodeの種類については,
-\hbox{\it The\ Lua\TeX\ Reference\/}の第8章を参照して欲しい.代表的なものを挙げると,
+\IT{The\ Lua\TeX\ Reference}の第8章を参照して欲しい.代表的なものを挙げると,
 
-\item {\it glyph\_node}: 文字(合字も含む)を表現する.和文処理グルーを挿入する際には,
-既に各{\it glyph\_node}が欧文文字のものか和文文字のものか区別がついている.
-\item {\it glue\_node}: glueを表す.
-\item {\it kern\_node}: kernを表す.各|kern_node|には|subtype|という値があり,
+\item \IT{glyph\_node}: 文字(合字も含む)を表現する.和文処理グルーを挿入する際には,
+既に各\IT{glyph\_node}が欧文文字のものか和文文字のものか区別がついている.また,
+しばしば\IT{glyph\_node}~$p$と,それの表す文字の文字コード$p.\mibox{char}$とを同一視する.
+\item \IT{glue\_node}: glueを表す.
+\item \IT{kern\_node}: kernを表す.各|kern_node|には|subtype|という値があり,
 次の3種類を区別できるようになっている.
 \itemitem 0: 欧文用TFM由来
 \itemitem 1: 明示的な|\kern|か,イタリック補正 (|\/|) によるもの
-\itemitem 2: 非数式アクセント用文字の左右位置調整のためのもの
-\item {\it penalty\_node}: penaltyを表す.
-\item {\it hlist\_node}: hbox(水平ボックス)を表す.
+\itemitem 2: |\accent|による非数式アクセント用文字の左右位置調整のためのもの
+\item \IT{penalty\_node}: penaltyを表す.
+\item \IT{hlist\_node}: hbox(水平ボックス)を表す.
 \enditem
 
-以後,次のように,nodeがどのように連続しているかを表すことにする.
+
+\item 次のように,nodeがどのように連続しているかを表すことにする.
 $$
-\node{a}\node{b}_{\rm I}\node{c}
+\node{a}\node{b}_{1}\node{c}
 $$
-右下についている添字は,Lua\TeX-ja においてそのnodeの役割を区別するためにつけられた
-値であり,次のようになっている.
-\begintt
-I: イタリック補正由来の\kern
-T: \[x]kanjiskipに置換されうる\kern
-J: JFM由来のglue/kern
-K: 禁則処理用penalty
-E: 
-KS: \kanjiskip
-XS: \xkanjiskip
-\endtt
+下添字は,Lua\TeX-jaにおいてそのnodeの役割を区別するためにつけられた
+値(icflagと呼ぼう)であり,次のようになっている.
+$$
+\vbox{\halign{#:\ \hfil&#\hfil\quad&#:\ \hfil&#\hfil\cr
+1&イタリック補正由来のkern &
+2&幅補正のため,hboxにカプセル化された和文文字\cr
+3&禁則処理用penalty&
+4&JFM由来のglue/kern\cr
+5&「行末」との間に入るkern&
+6&|\kanjiskip|用glue\cr
+7&|\xkanjiskip|用glue&
+8&既に処理対象となったnode\cr
+15&リスト先頭/末尾に入るglue/kern/penalty\span\omit\span\cr
+}}
+$$
+和文処理グルーの挿入処理に一度通されたnodeは,みなicflagが3以上となることに注意.
+
+なお,上添字はnodeのsubtypeを表す.
+\item {\sf jaxspmode}のようなサンセリフ体で,|\ltjsetparameter|で設定可能なパラメタ値を表す.
+\item タイプライタ体の|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|は,
+それぞれ「和文間空白」「和欧文間空白」の意味で抽象的に用いている.
+\item nil値は$\emptyset$と書く.
+\enditem
 
+\beginsection 方針など
 
-\beginsection JFM由来グルーの挿入 ({\tt luatexja-jfmglue.lua})
+本バージョンにおいては,JFM由来グルーと|\[x]kanjiskip|の挿入は同じ段階で行われる.
+大雑把に言うと,
+$$
+\vbox{\hsize=0.85\hsize\bf 和文処理グルーの挿入処理では,以下は存在しないものとして扱われる:
+\item 「文字に付属する」アクセントやイタリック補正.
+\item 行中数式の内部.
+\item 実際の組版中には現れないinsertion, vadjust, mark, whatsit node達.
+\enditem}
+$$
+
+\beginparagraph 和文文字の「自然長」(JFMにおける{\tt width}の指定値)について
+
+p\TeX においては,和文文字の行頭と行末に自動的にglueやkernをおくことはできなかったことから,
+JFMにおける文字幅の意味は,
+$$
+\hbox{\vbox{\hsize=0.8\hsize \noindent
+「その文字が行頭におかれるときの,版面左端の位置」を左端,\hfill\break
+「その文字が行末におかれるときの,版面右端の位置」を右端としたときの幅}}
+$$
+というように,明確な意味があるものであった.例えば,乙部さんによるぶら下げ組パッケージ ({\tt burasage.lzh})
+においては,句読点類(「|,、.。|」の4文字)の文字幅は0.0となっている.
+
+一方,Lua\TeX-ja においては,和文文字が行末にきた場合,その文字と行末の間にkernを挿入することができる:
+例えば,前に挙げた4文字についてぶら下げ組をしたいのであれば,
 
-JFM由来グルーの処理は,「連続する2つのnodeの間に何を入れるか」という単位で行われる.
-そのため,
-\item node生成を伴わないもの(グループ境界,|\relax|等)は全て無視される.
-\item 一方,node生成を伴うものは全て「透過しない」.
-例えば,次のソースにおいて,閉じ括弧と開き括弧の間に入る物は,
-左と右とで異なる:
 \begintt
-)(  )\hbox{}(
+   [1701] = {
+      chars = { 'lineend' }
+   },
+   [42] = {
+      chars = { ',', '、', '.', '。' },
+      align = 'left', left = 0.0, down = 0.0,
+      width = 0.5, height = 0.88, depth = 0.12, italic=0.0,
+      kern = { [1701] = -0.5, ...}
+   }, ...
 \endtt
-\item JFM由来グルーの挿入禁止を行う|\inhibitglue|は,内部では専用のnodeを作ること
-によって実装している.この|\inhibitglue|用nodeは透過する.
-\enditem
-以下,$q$, $p$を連続するnodeとする.
+のように,「文字|'lineend'|との間に負のkernをおく」ように指定すればよい.
+そのため,p\TeX と比較すると,JFMにおける|width|の指定値に絶対的な意味はあまりないことになる.
+{\small 行頭にもkern をおけるようにするかどうかは検討中である.}
 
 
-\beginparagraph 2つの和文文字の間
+\beginparagraph グルーの挿入単位「塊」
 
-この場合,グルー挿入に関係する量は次の通りである.これら3つの量の値によって,
-$q$と$p$の間に何が挿入されるかが決定される.これらの記号は他の場合にも用いる.
-\item $g$: JFMで指定された,$q$と$p$の間に入るglue/kern.
-JFMで規定されていないときは$\emptyset$と書こう.
-両ノードで使われているJFMが異なる時の$g$の決定方法は,後に記述する.
-\item $w$: JFMで指定された,「$q$の直後で改行が行われた場合,
-$q$と行末の間に入るカーン量」の値.
+和文処理グルーの挿入処理は,
+ごく大雑把にいうと,「連続する2つのnodeの間に何を挿入するか」の繰り返しである.
+実際の挿入処理は,「隣り合った2つの『塊』\IT{Nq}, \IT{Np}の間に何を入れるか」を
+単位として行われる.
 
-$g-w$で,$g$の自然長を$w$だけ減算したglue/kernを表すことにする.
+\medskip\noindent{\bf 定義}\quad
+「{\bf 塊}」(\IT{Nn}などで表す)とは,次の4つのいずれかの条件を満たすnode(達のリスト)
+のことである:
+\enum icflagが3以上15未満であるnode達の連続からなるリスト.
 
-\item $P$: $q$に対する行末禁則用ペナルティ (post-break penalty) と,
-$p$に対する行頭禁則用ペナルティ (pre-break penalty) との和.どちらも
-設定されていないときは0となる.
-\enditem
+このようなnode達は,既に組み上がったhboxを|\unpackage|により解体したときに発生する.
+一度和文処理グルーの挿入処理が行われているため,二重の処理を防ぐためにこうして1つの塊を構成させている.
 
-設計方針としては,
-\item JFM由来で入るものがkernの場合,この場所では行分割は許さない.
-\item そうでない場合,(penaltyの値$P$があるが)この場所での行分割は可能である.
-\enditem
-である.さて,次が実際の場合わけである:
-
-\enum $w\neq 0$, $g=\emptyset$のとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\nk w}_{\rm E}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{\nk{-w}}_{\rm T}
-\node{p}
+なお,icflagが15であるnodeは,処理中に発見されしだい削除される
+(hboxの先頭や末尾に挿入されたglue/kern/penaltyであるので,
+本来の「段落/hboxの中身に適宜グルーを挿入する」という目的を考えると存在すべきでない).
+\enum 数式開始を表す\IT{math\_node}から始まる文中数式を表すnodeのリスト:
 $$
-
-\enum $w\neq 0$, $g\neq\emptyset$のとき:
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\nk w}_{\rm E}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{g-w}_{\rm J}
-\node{p}
+ \node{\hbox{数式境界(開始)}}
+ \longrightarrow\hbox{(この間,行中数式が続く)}
+ \node{\hbox{数式境界(終了)}}
 $$
-
-\enum $w=0$, $g$: kernのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
+\enum \IT{glyph\_node}~$p$と,それと切り離すことが望ましくないと考えられるnode達:
 $$
-
-\enum $w=0$, $g$: glueのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
+ \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}^2
+ \node{\hbox{アクセント文字}}
+ \node{\nk\hskip-.5em}^2\Bigr]
+ \node{p}
+ \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}_1\Bigr]
 $$
+但し,これには$p$が${\rm icflag}=2$のhboxである場合も含む.%
+{\small ←この場合の処理は実はおこらない?}
+\enum {\bf 以下のどれにもあてはまらない}node~$p$:
+\itemitem 組版結果からは消えてしまう,\IT{ins\_node}, 
+\IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}.
+\itemitem penalty(←但し,挿入処理の過程で値が変更されることはある)
 
-\enum $w=0$, $g=\emptyset$, $P\neq 0$のとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{p}
-$$
+\enditem
 
-\enum $w=0$, $g=\emptyset$, $P=0$のとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{p}
-$$
+\medskip\noindent{\bf 記号}\quad
+\IT{Bp}で,塊\IT{Nq}と塊\IT{Np}の間にある\IT{penalty\_node}達の配列を表す.
+
+
+\beginsection 挿入処理の大枠
+
+\beginparagraph 「塊」の保持するデータ
+
+「塊」\IT{Np}は,内部では少なくとも次の要素を持ったテーブルとして表される:
+
+\item \IT{.first}: \IT{Np}の先頭のnode.
+\item \IT{.nuc}: \IT{Np}の「核」となるnode.
+\itemitem 1., 2.によるものである場合,$\mibox{Np.nuc}=\mibox{Np.first}$.
+\item \IT{.last}: \IT{Np}の最後のnode.
+\item \IT{.id}: \IT{Np}の種類を表す値.
+\itemitem 1.によるものである場合,\IT{id\_pbox}(Pseudo BOXのつもり).
+\itemitem 3.によるものであり,$p$が和文文字だった場合,\IT{id\_jglyph}.
+\itemitem 4.によるものであり,$p$が垂直変位がnon-zeroなhbox,
+あるいはvbox, ruleだった場合,\IT{id\_box\_like}.
+\itemitem それ以外の場合,node~$p$の種別を表す数値$p.\mibox{id}$そのもの.
+(数値そのものだと使い勝手が悪いので,\IT{id\_glyph}, \IT{id\_glue}, \IT{id\_kern}などと
+別名を定義している)
 \enditem
 
-なお,両ノードで使われているJFMが異なる時の$g$の決定方法であるが,
-\enum $g_{\rm L}$を,$q$に使用されているJFMにおける,「$q$と文字|'diffmet'|」の間に
-入るglue/kernの値とする.
-\enum $g_{\rm R}$を,$p$に使用されているJFMにおける,「文字|'diffmet'|と$p$」の間に
-入るglue/kernの値とする.
-\enum 両方から,実際に入る$g$の値を計算する.
-\itemitem $g_L$, $g_R$の少なくとも片方が$\emptyset$のときは,$\emptyset$でない方を
-そのまま採用する.
-\itemitem 両方とも$\emptyset$でない場合は,|differentjfm|の値にそって$g$の値を計算する.
+\medskip\noindent{\bf 定義}\quad
+「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{head}(\mibox{Np})$は,以下で定義される:
+
+\noindent{\small (説明の都合上作った記法で,Luaソース中にはこのような書き方はない)}
+
+\item \IT{Np.id}が\IT{id\_hlist}の場合:後に述べる{\tt check\_box}関数を用いて,
+hbox~\IT{Np.nuc}中の「最初のnode」「最後のnode」を求める.
+\item \IT{Np.id}が\IT{id\_pbox}の場合:\IT{id\_hlist}の場合とほぼ同様.
+\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_glyph}$(欧文文字)の場合:
+\itemitem \IT{glyph\_node}~\IT{Np.nuc}が単一の文字を格納している(合字でない)場合は,\IT{Np.nuc}自身.
+\itemitem そうでない場合は,合字の構成要素の先頭→構成要素の先頭→……
+と再帰的に探索し,最後にたどり着いた\IT{glyph\_node}.
+\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_disc}$ (discretionary break) の場合:
+\IT{disc\_node}は,
+\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)の場合:\IT{Np.nuc}自身.
+\item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_math}$(数式境界)の場合:
+「文字コード$-1$の欧文文字」を仮想的に考え,それを$\mibox{head}(\mibox{Np})$とする.
+\item それ以外の場合:未定義.敢えて書けば$\mibox{head}(\mibox{Np}):=\emptyset$.
 \enditem
 
-\beginparagraph 和文文字と(和文文字,kern以外のnode)の間
-
-「和文文字の間」の場合に対して,以下が異なる:
-\item $g$は,$q$に使用されているJFMにおける,「$q$と文字|'jcharbdd'|」の間に
-入るglue/kernの値である.
-\item $p$が{\bf penaltyでない場合}は,いつもこの位置で行分割できるようにするため,
-case~6 ($w$, $P=0$, $g=\emptyset$) の場合にも,$q$と$p$の間には
-0という値のpenaltyが入る.即ち,次のようになる.
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np 0}_{\rm K}
-\node{p}
-$$
+\noindent 同様にして,「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{last}(\mibox{Np})$も定義され,
+「\IT{Np}は,先頭が$\mibox{head}(\mibox{Np})$,
+末尾が$\mibox{tail}(\mibox{Np})$であるような単語」のように
+考えることができる.
+
+\medskip\noindent{\bf 定義}\quad
+「\IT{glyph\_node}~$h$の情報を算出する」とは,
+$h\neq\emptyset$の時に,テーブル\IT{Np}に
+以下のような要素を追加することである:
+
+\item \IT{.pre}: $h$の文字コードに対する{\sf prebreakpenalty}パラメタの値
+\item \IT{.post}: $h$の文字コードに対する{\sf postbreakpenalty}パラメタの値
+\item \IT{.xspc\_before}, \IT{.xspc\_after}: $h$の前後に|\xkanjiskip|が挿入可能であるかの
+指定値(パラメタ{\sf jaxspmode}, {\sf alxspmode}由来)
+\item \IT{.auto\_xspc}: $h$での{\sf autoxspacing}パラメタの値
 \enditem
 
-\beginparagraph (和文文字,kern以外のnode)と和文文字の間
+$h$が和文文字を格納している場合は,さらに次の要素の追加作業も含む:
 
-この場合も,基本的には「和文文字の間」と似ているが,以下が異なる:
-\item $g$は,$p$のJFMにおける,「文字|'jcharbdd'|と$p$」の間に
-入るglue/kernの値である.
-\item 常に$w=0$である.
-\item いつもこの位置で行分割できるようにするため,
-case~6 ($w$, $P=0$, $g=\emptyset$) の場合にも,$q$と$p$の間には
-0という値のpenaltyが入る.
+\item \IT{.size}: $h$で使われている和文フォントのフォントサイズ.
+\item \IT{.met}, \IT{.var}: 使われているJFMの情報.
+\item \IT{.auto\_kspc}: {\sf autospacing}パラメタの値.
 \enditem
 
-即ち,次の3通りになる.
-\enum $g$: kernのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
-$$
+\beginparagraph 全体図
 
-\enum $g$: glueのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
-$$
+\enum 変数類の初期化
+\itemitem 処理対象が段落の中身(後で行分割される)の場合:$\mibox{mode}\leftarrow\top$
+\itemT \IT{lp}(node走査用カーソル)の初期位置は,
+リスト先頭部にある|\parindent|由来のhboxや
+local paragraph($\Omega$由来)等の情報を格納するwhatsit nodeたちが終わった所
+(つまり,段落本来の先頭部分)となる.
+\itemT \IT{last}(リスト末尾のnode)も,リストの最後部に挿入される|\parfillskip|由来のglue%
+を指す.
+\itemitem 
+処理対象がhboxの中身の場合:$\mibox{mode}\leftarrow\bot$
+\itemT \IT{lp}はリスト先頭.
+\itemT 番人として,リスト末尾にkernを挿入.\IT{last}はこのkernとなる.
 
-\enum $g=\emptyset$のとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np P}_{\rm K}
-\node{p}
-$$
-\enditem
+\enum 先頭が\IT{lp}以降にある塊で,一番早いものを\IT{Np}にセットする.
+\itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら,処理対象のリストに塊はないので,8.へ.
+\itemitem そうでなければ,$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく.
+\itemitem 本段階終了後,\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる.
 
-\beginparagraph 和文文字とkernの間,kernと和文文字の間
 
-和文文字の後にkernが続いた場合,あるいはkernの後に和文文字が続いた場合,
-この間で行分割はできないものとしている.そのため,
-以下の3ケースに限られる:
-\enum $g$: kernのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
-$$
+\enum ({\tt handle\_list\_head}) 
+リストに最初に出てくる塊\IT{Np}が求まったので,リスト「先頭」とこの塊との間に和文処理グルーを挿入.
 
-\enum $g$: glueのとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{\np 10000}_{\rm K}
-\node{g}_{\rm J}
-\node{p}
-$$
+\enum 今の塊\IT{Np}と,その次の塊の間に入る和文処理グルーを求めるため,
+一旦$\mibox{Nq}\leftarrow \mibox{Np}$として待避させ,次の塊\IT{Np}を探索する.
+\itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら,\IT{Nq}がリスト中最後の塊であるので,
+7.へ.
+\itemitem そうでなければ,$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく.
+\itemitem 本段階終了後,\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる.
 
-\enum $g=\emptyset$のとき
-$$\ncount=0
-\node{q}
-\node{p}
-$$
-\enditem
+\enum \IT{Nq}と\IT{Np}の間に和文処理グルーを挿入する.\IT{Np.id}による場合分けを行う.
+「main loop その\nobreak1,~2」を参照のこと.
 
-なお,ここでの$g$は,
-\item kernが前だった場合は,
-$q$のJFMにおける,「$q$と|'jcharbdd'|」の間に
-入るglue/kernの値.
-\item kernが後だった場合は,
-$p$のJFMにおける,「|'jcharbdd'|と$p$」の間に
-入るglue/kernの値.
-\enditem
+\enum \IT{Np}が単一の文字ではない{\small (合字など)}可能性がある以下の場合において,
+$\mibox{tail}(\mibox{Np})$の情報を算出する.終わったら,再びループに入るため,4.へ.
 
-\beginparagraph 要検討の箇所
 
-私が推測するに,欧文では,
-\item 単語内ではフォントは変わらない.
-\item 単語内では,明示的に/ハイフネーションにより挿入されたdiscretionary break以外では
-行分割がおきない.
+\itemitem \IT{id\_glyph}(欧文文字)のとき
+\itemitem \IT{id\_disc} (discretionary break) のとき
+\itemitem \IT{id\_hlist}のとき
+\itemitem \IT{id\_pbox}のとき
+
+\enum ({\tt handle\_list\_tail}) 
+リストの最後にある塊\IT{Nq}が求まったので,この塊とリスト「末尾」の間に和文処理グルーを挿入.
+
+\enum $\mibox{mode}=\bot$の場合,番人となるkernを1.において挿入したので,その番人を削除する.
+
 \enditem
-という事情があるため,TFM由来のkernや合字処理は(nodeを生成しないもの以外は)
-何も透過しないという状態になっているものと思われます.
 
-そのため,JFMグルー等の仕様を考える場合,欧文でいう「単語」に対応するようなものは
-何か,というのを考える必要があります.現実装では,素直に欧文の合字処理と同様のものであると考え,
-透過するnodeはない,という仕様にしています.
-しかし,|\[x]kanjiskip|の処理と共通にしてしまうというのも
-考え方によってはありかもしれません.
+\beginsection リスト先頭・末尾の処理と「boxの内容」
 
-\bigskip
-\item {\bf イタリック補正のkernの周囲}
+\beginparagraph リスト先頭の処理 ({\tt handle\_list\_head})
 
-例えば,|jfm-ujis.lua|では,|'jcharbdd'|は文字クラス
-0であるため,今の実装では,\hfil\break
-「|)\/(|」という入力からは,次のnodeの並びを得る:
-\setbox1=\hbox{|\/|}%
-$$
-\node{\hbox{)}}
-\node{\np 10000}_{\rm K}
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}
-\node{\nk \copy1}
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}
-\node{\hbox{(}}
-$$
-一方,イタリック補正をJFM由来グルーが透過するとしたならば,当然
+次の場合に,
+\IT{Np}で使われているのと同じJFMを使った「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
+\IT{Np}との間に入るglue/kernを,\IT{Np.first}の直前に挿入する:
+\item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字であるとき.
+\enditem
 $$
-\node{\hbox{)}}
-\node{\nk \copy1}
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}
-\node{\hbox{(}}
+\vcenter{\halign{$\mibox{mode}=#$:\qquad\hfil&$#$\hfil\cr
+\bot&\node{\kern-1em}\,\hbox{(リスト先頭)}\longrightarrow\cdots\node{g}_{15}
+\node{\mibox{Np}}\cr
+\top&\node{\hbox{{\tt\char92 parindent}由来hbox}}\longrightarrow\cdots
+\Bigl[\node{\np 10000}_{15}\Bigr]\node{g}_{15}\node{\mibox{Np}}\cr
+}}
 $$
-となる(実際の組版イメージでは,
-「{\tenmini 斜め)}\hbox{}(」「{\tenmini 斜め)}(」).どちらにするか?
+ここで,$g$がglueかつ$\mibox{mode}=\top$かつ$\#\mibox{Bp}=0$のときのみ,|\parindent|由来のhboxの直後で改行されることを防ぐために
+$g$の直前にpenaltyを挿入する.{\small 
+($\#\mibox{Bp}$が1以上の場合は,|\parindent|と\IT{Np}の間にある
+penaltyのため,\IT{Np}の直前での改行が起こり得る状態となっているので,
+特にそれを抑制することもしない)\inhibitglue}.
+
 
+\beginparagraph リスト末尾の処理 ({\tt handle\_list\_tail})
 
+この場合,\IT{mode}の値により処理が全く異なる.
 
-\item {\bf penaltyの周囲}
+\noindent{\bf A: \IT{mode}が偽である場合.}
 
-これも,例えば次の設定の下では,「|)\penalty1701(|」からは以下を得る:
-\itemitem 「)」と行末の間に$-0.5\z$だけkernを入れる.
-\itemitem 「)」「(」の行頭/行末禁則用penaltyの値はどれも1000.
+この場合はリストはhboxの中身だから,行分割はおこり得ない.
+リスト先頭の処理と同様に,
+次の場合に
+\IT{Nq}と「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
+の間に入るglue/kernを,\IT{Nq.last}の直後に挿入する:
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき.
+\enditem
+$$
+\node{\mibox{Nq}}\node{g}_{15}\longrightarrow\cdots\node{\nk\hbox{(番人)}}
 $$
-\halign{$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil\cr
-\node{\hbox{)}}&\ncount=1
-\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1
-\node{\np 1000}_{\rm K}&\ncount=1
-\node{\ng 1\z_{-0.5}}_{\rm J}\cr
-&\ncount=1\node{\np 1701}&\ncount=1
-\node{\np 1000}_{\rm K}&\ncount=1
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1
-\node{\hbox{(}}\cr}
+上の番人は,次のstepで除去されるのだった.
+
+\medskip
+\noindent{\bf B: \IT{mode}が真である場合.}
+
+この場合,段落の末尾には常に|\penalty 10000|と|\parfillskip|由来のグルーが存在する.
+そのため,上のように「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」との空白を考えるのではなく,
+まず,\IT{Nq}が行末にきたときに行末との間に入る空白$w$を代わりに挿入する.
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$(和文文字)
+\item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり,$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき.
+\enditem
 $$
-\leftskip2\zw
-例えばpenaltyを合算することとした場合,上の入力例では本来「)」「(」の間に
-1701のpenaltyがあるのだから,
+\node{\mibox{Nq}}\node{\nk w}_{15}\node{\np10000}\longrightarrow\cdots
+\node{\ng (\hbox{\tt\char92 parfillskip})}
 $$
-\halign{$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil&$#$\hfil\cr
-\node{\hbox{)}}&\ncount=1
-\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1
-\node{\np 3701}_{\rm K}&\ncount=1
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1
-\node{\hbox{(}}\cr
-\node{\hbox{)}}&\ncount=1
-\node{\nk {-0.5}\z}_{\rm E}&\ncount=1
-\node{\np 3701}_{\rm K}&\ncount=1
-\node{\ng 1\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1
-\node{\ng 0.5\z_{-0.5}}_{\rm J}&\ncount=1
-\node{\hbox{(}}\cr
-}
+次に,|\jcharwidowpenalty|の挿入処理を行う→省略.
+
+\beginparagraph box内の「最初/最後の文字」の検索 ({\tt check\_box})
+
+「hboxの中の文字と外の文字の間に」|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|の挿入を行えるようにするため,
+{\tt check\_box}関数ではhbox内の「最初のnode」「最後のnode」の検索を行う.
+
+\item 以下のnodeは検索から除外される:
+\itemitem 組版結果からは消えてしまう,\IT{ins\_node}, 
+\IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}, penalty.
+\itemitem (box中身の先頭/末尾に入っている)icflagが7のglue/kern/penalty.
+\itemitem アクセント部とイタリック補正.
+\item \IT{hlist\_node}~$q$に出会ったら,$q$の垂直変位量が0である限り,検索は$q$の内部も進む.以下同文.
+\item 検索して得られた「最初のnode」「最後のnode」がそれぞれ\IT{glyph\_node}でなければ,
+実際には$\emptyset$を返す.
+\enditem
+
+\vfill\eject
+\beginsection main loop
+
+\beginparagraph 一覧表
+
+\IT{Nq}, \IT{Np}の種類別に挿入されるglue/kernの種別を表にすると次のようになる.
+
+\def\;{\hskip0.25em}\ltjsetparameter{jacharrange={+1}}
+\def\gkf#1#2#3#4#5{$\vcenter{\small\rm\halign{\hbox to 1em{\hss##\hss}\;\vrule&%
+\hbox to 3em{\hss##\hss}&\vrule\;\hbox to 1em{\hss##\hss}\cr
+#1\mathstrut&\omit\hfil #2\span\omit\cr\noalign{\hrule}#3&#4\strut&#5\cr}}$}
+\setbox1=\hbox{\gkf{E}{M→K}{○}{nor}{○}}
+\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.5em\relax depth \dimexpr \dp1\relax}
+$$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
+\vcenter{\halign{\hfil#\hfil\hskip1em\copy2%
+\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil%
+\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\:&\:\hfil#\hfil\cr
+\raise0.5em\hbox{$\vcenter{\hbox{\IT{Nq}→}\smallskip\hbox{\IT{Np}↓}}$}%
+&和文1&和文2&欧文&箱&id\_glue&id\_kern\cr
+\noalign{\hrule}
+和文1&
+\gkf{E}{M→K}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$→K}{×}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$→X}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{all}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{nor}{○}&
+\gkf{}{$\rm O_A$}{---}{sup}{○}\cr
+和文2&
+\gkf{E}{$\rm O_B$→K}{○}{nor}{×}&
+\gkf{}{K}{×}{sup}{×}&
+\gkf{}{X}{○}{sup}{×}\cr
+欧文&
+\gkf{E}{$\rm O_B$→X}{○}{nor}{○}&
+\gkf{}{X}{○}{sup}{×}\cr
+箱&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{alw}{---}\cr
+\IT{id\_glue}&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{nor}{---}\cr
+\IT{id\_kern}&\gkf{E}{$\rm O_B$}{○}{sup}{---}\cr
+}}$$
+
+\item {\bf 項目名}\quad 表1行目の\IT{Nq}の種類について説明する.\IT{Np}についても同様.
+\itemitem 「和文1」:リスト中に直接出現している和文文字.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$であったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$かつ$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が和文文字であったとき.
+\itemitem 「和文2」:リスト内にあるhboxの中身として出現した和文文字.すなわち,
+$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_hlist}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が和文文字であったとき.
+\itemitem 「欧文」:$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字であったとき.即ち,
+\itemT リスト中に直接出現しているとき($\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$ or~%
+$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$かつ$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字).
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_hlist}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が欧文文字であったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_math}$であったとき.
+\itemitem 「箱」:前後に和文処理グルーが挿入されない用なbox状のnode.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_list}$かつ
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$が文字でなかった(未定義)だったとき.
+\itemT $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_box\_like}$のとき.
+\itemitem 「\IT{id\_glue}」:そのまま,$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_glue}$であったとき.
+\itemitem 「\IT{id\_kern}」:そのまま,$\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_kern}$であったとき.
+
+\item 表中の各セルは,それぞれ次のような内容を表している:
+$$\vcenter{\rm\halign{\hbox to 3em{\hss#\hss}\;\vrule&%
+\hbox to 3.5em{\hss#\hss}&\vrule\;\hbox to 3em{\hss#\hss}\cr
+左空白\mathstrut&\omit\hfil 右空白\span\omit\cr\noalign{\hrule}L&P取扱\strut&R\cr}}$$
+
+\itemitem 「左空白」:\IT{Nq}の直後に挿入される空白の種類.空欄は,何も入らないことを表す.
+\itemitem 「右空白」:\IT{Np}の直前に挿入される空白の種類.
+
+なお,「A→B」は,まずAの種類のglue/kernを調べ,それが未定義ならば,
+Bの種類のglue/kernを採用することを示している.このとき,矢印の右側に入る空白%
+(K, X)はいつでも定義されていることに注意.
+
+\itemitem 「P取扱」:\IT{Nq}と\IT{Np}の間に入る禁則用ペナルティの取扱の方法を表す.
+\IT{Nq}と\IT{Np}の間で常に行分割を許すかに伴い,
+{\bf nor}mal, {\bf alw}ays, {\bf sup}pressの3種類がある.
+\itemitem 「L」「R」:禁則用ペナルティの挿入処理において,
+\IT{Nq.post}~(L)や\IT{Np.pre}~(R)の値を実際に活用するかどうかを示す.値は次の3種類:
 $$
-のどちらか(上はpenaltyを透過する場合,下は透過しない場合)にするのが
-良いと思われます.
+\hbox{○(利用する),×(利用せず,0として扱う),---(未定義のため0扱い)}$$
+\enditem
 
 
-\item {\bf discretionary breakの取り扱い}
+\beginparagraph 挿入されるglue/kernの種類
 
-discretionary break ({\it disc\_node})は,行分割時の行末の内容<pre>,
-行頭の内容<post>,それに行分割しないときの内容<no_break>の3つをリストの形で
-持っている.|linebreak.w|を見る限り,Lua\TeX でも<pre>, <post>, <no_break>の
-中身にはglueやpenaltyを許容していないようだ.
+前節の表にある空白の種類についての解説を行う.
 
-現行の実装では,<pre>, <post>, <no_break>のどれも,和文フォントへの置換の
-段階からして行われていない(だから中身は全部欧文扱いとなる).
-{\small 単純にサボっていました|^^;|}
-<pre>, <post>, <no_break>の中身にglueやpenaltyが許容されないことから,
-これらに対する和文用処理の方法として,次の2種類が挙げられる.
-私は前者で良いのではないかと思っているのだが…….
-\itemitem (現行のまま)discretionary breakの中身に和文文字はないものと想定する.
-例えば<pre>の中身に和文文字を入れたい場合は,<pre>の中身全体を
-必ずhboxで括ることとする.
-\itemitem 「glueを挿入」を全部「自然長だけを取り出したkernを挿入」に置き換え,
-普段の和文処理グルー挿入処理を流用する.
+\item E: \IT{Nq}が行末にきたとき,
+\IT{Nq}と行末の間に入る空白 (kern).挿入位置は\IT{Nq.last}の直後.
+\itemitem JFMでは「文字コード|'lineend'|の文字」との間に入るkern量として設定できる.
+\itemitem 右空白がkernであるときは挿入されない.
+\itemitem この種類のkernが挿入される時,右空白は自然長がEの分だけ引かれる.
 
+
+\item M: \IT{Nq}と\IT{Np}の間に入るJFM由来のglue/kern.
+\itemitem \IT{Nq}, \IT{Np}の間で|\inhibitglue|を発行した場合,挿入は抑止される.
+\itemitem 両方の塊で使われているJFMが(サイズもこめて)等しい場合は,両者で使われている
+JFMの情報をそのまま利用できるので,量の決定は容易い.
+\itemitem そうでなければ,まず
+$$
+\vcenter{\halign{\hfil$#:={}$&(\inhibitglue#\inhibitglue)\cr
+gb&\IT{Nq}と「文字コードが|'diffmet'|の文字」との間に入るglue/kern\cr
+ga&「文字コードが|'diffmet'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue/kern\cr
+}}
+$$
+として2つの量を計算.少なくとも片方が未定義の場合は,もう片方の値を用いる.
+そうでなければ,両者の値から自然長,伸び量,縮み量ごとに計算
+(方法として,平均,和,大きい方,小さい方)を行い,それによって得られたglue/kernを採用する.
+\item K: |\kanjiskip|を表すglueを挿入($\emptyset$にはならない).
+\itemitem 両方の塊において「|\kanjiskip|の自動挿入が無効」
+ ($\mibox{Nq.auto\_kspc}\vee \mibox{Np.auto\_kspc}=\bot$) ならば,長さ0のglueを挿入する.
+\itemitem {\sf kanjiskip}パラメタの自然長が$\hbox{\tt\char92maxdimen}=(2^{30}-1)\,{\rm sp}$で
+あれば,
+JFMに指定されている|\kanjiskip|の量を用いる.\IT{Nq}, \IT{Np}で使われているJFMが異なった時の処理は,
+Mの場合と同じである.
+\itemitem 上のどれにも当てはまらなければ,{\sf kanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する.
+\item X: |\xkanjiskip|を表すglueを挿入($\emptyset$にはならない).
+\itemitem 次のいずれかの場合には,|\xkanjiskip|は長さ0のglueとなる:
+\itemT  両方の塊において,「|\xkanjiskip|の自動挿入が無効」という指定
+($\mibox{Nq}.\mibox{auto\_xspc}\vee \mibox{Np}.\mibox{auto\_xspc}=\bot$)
+がされていた場合.
+\itemT \IT{Nq}内の文字について「直後への|\xkanjiskip|挿入が無効」であった場合,即ち
+$\hbox{\sf alxspmode}\ge 2$(欧文)か$\hbox{\sf jaxspmode}\equiv0\pmod2$(和文).
+\itemT \IT{Np}内の文字について「直前への|\xkanjiskip|挿入が無効」であった場合,即ち
+$\hbox{\sf alxspmode}\equiv0\pmod2$(欧文)か$\hbox{\sf jaxspmode}\ge2$(和文).
+\itemitem {\sf xkanjiskip}パラメタの自然長が|\maxdimen|であれば,
+$\mibox{last}(\mibox{Nq})$, $\mibox{head}(\mibox{Np})$の片方が和文文字であるので,
+そこで使われているJFMで指定されている|\xkanjiskip|の量を用いる
+(JFMで指定されていなければ長さ0のglueと見なされる).
+\itemitem 上のどれにも当てはまらなければ,{\sf xkanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する.
+\item $\rm O_B$: \IT{Nq}と「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」との間に入るglue.
+Mのバリエーションと考えればよく,同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される.
+\item $\rm O_A$: 「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue.
+Mのバリエーションと考えればよく,同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される.
 \enditem
 
-\beginsection {\tt \char"5C[x]kanjiskip}の挿入%"
 
-現実装の|\[x]kanjiskip|の挿入の方針として,
-\item JFMグルーが挿入されていないところに「標準の空き量」として挿入する.
-\item 実際の段落/hboxの内容に即して,組版イメージの見た目に関係のないところは透過する.
-\enditem
+\beginparagraph penaltyまわりの処理
 
-|\[x]kanjiskip|挿入処理では,次の3つのnodeを用いている.
-$$\ncount=0
-\node{\it nr}\longrightarrow\cdots
-\node{\it nq}\longrightarrow\cdots
-\node{\it np}
+隣り合った塊\IT{Nq}, \IT{Np}の間には,集合\IT{Bp}で表される0個以上のpenaltyがあるのだった:
 $$
-\item $\it nr$と$\it np$の間に|\[x]kanjiskip|を挿入しようとする.
-\item 実際にnodeの形で挿入しようとする場所は$\it nq$の直後である.
-\item $\it nr$, $\it nq$は異なるnodeとは限らない.
-\item $\it np$はリストの先頭から末尾までループで渡る.その過程で
-$\it nr$, $\it nq$を適宜更新し,実際のnode挿入処理を行っている.
+\node{\mibox{Nq}}
+\Bigl[\node{\hbox{E}}_4\Bigr]
+\longrightarrow\cdots 
+\hbox{(penaltyある可能性あり)}\cdots
+\Bigl[\node{\hbox{M, K, X他}}_{3,\,5,\,6}\Bigr]
+\node{\mibox{Np}}
+$$
+禁則処理に関係するpenaltyの挿入処理は,以下に述べるところ部分は共通の動作である.
+
+\medskip 
+$\#\mibox{Bp}\ge 1$の場合には,{\bf 全ての}\IT{Bp}の元$p$~(penalty)に対して次を行う:
+$$p.\mibox{penalty}\mathrel{+}=a,\qquad a:=\mibox{Nq.post}+\mibox{Np.pre}.$$
+\item
+全ての\IT{Bp}の元に対して行うのは,
+実際にはどのpenaltyの位置で行分割が行われるかがわからないからである.
+\item 数ページ前の表で,左下が「×」 or 「---」となっていた場合は,上の計算式において
+\IT{Nq.post}は0と扱われる.右下が「×」 or 「---」なら,\IT{Np.pre}が0と扱われる.
+\item penalty値の計算では,$+10000$は正の無限大,$-10000$は負の無限大として扱っている.
+そのため,$a$の計算や$p.\mibox{penalty}$への加算代入のところでは,
+通常の加減算で絶対値が10000を越えたら分はカットし,さらに$(10000)+(-10000)=0$としている.
 \enditem
 
-ループの中で,以下の場合には$\it nr$は変化せず,${\it nq}\leftarrow {\it np}$となる.
-つまり,これらのnodeに対して|\[x]kanjiskip|は透過する:
-\item $\it np$がpenaltyの場合
-\item $\it np$がkernであって,予備知識の項目で述べられた値が
+$\#\mibox{Bp}=0$の場合が,penalty挿入の3種類の方法「normal」「always」「suppress」で
+異なる部分である:
+
+\item {\bf「normal」の場合:}
+次の場合に,$p.\mibox{penalty}=a$であるpenalty~$p$を作成し,
+それを(M, K他のglue挿入前に)\IT{Np.first}の直前に挿入する:
 $$
-\hbox{I (イタリック補正),E(行末との間),T(一時的)}
+\hbox{左空白(E)が存在しているか,$a\neq 0$かつ右空白がkernである.}
 $$
-であるもの.後者2つはJFMグルーの挿入で入るものなので,
-ユーザは「イタリック補正は透過」と考えればよい.
-\item $\it np$がアクセント由来のもの.この場合は,$\it nq$は変化せず,
-${\it np}\leftarrow {\it next}({\it next}({\it np}))$となる.
-\item $\it np$がinsertion, mark, |\vadjust|, whatsitのnodeである場合.
-これらは水平リストからは消え去る運命にある.
+\item {\bf「always」の場合:}
+この場合は,\IT{Nq}, \IT{Np}の間で常に行分割可能にしたいので,挿入する条件は以下のようになる:
+$$
+\hbox{左空白(E)が存在しているか,右空白がglueでない(つまり,kernか未定義のとき).}
+$$
+
+\item {\bf「suppress」の場合:}このとき,\IT{Nq}と\IT{Np}の間での行分割は元々不可能である.
+Lua\TeX-ja では,そのような場合を「わざわざ行分割可能に」することはしない.
+つまり,右空白がglueであるとき,その直前に|\penalty 10000|を挿入する.
 \enditem
 
+\beginparagraph いくつかの例:未完
+
+\beginsection main loop その2: その他の場合
+
+\setbox1=\hbox{hp}\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.25em\relax depth \dimexpr \dp1+0.25em\relax}
+$$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
+\vcenter{\halign{\hfil\IT{#}\hfil\hskip1em\copy2%
+\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil%
+\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\cr
+\IT{Np}→&&id\_hlist 非文字\cr
+\IT{Nq}↓&$\mibox{head}(\mibox{Nq})$\rm: 欧文&id\_box\_like&id\_glue&id\_kern\cr
+\noalign{\vskip.25em\hrule\vskip.25em}
+id\_jglyph&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
+id\_pbox 和&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
+id\_hlist 和&\rm X${}^+$&---&---&---\cr
+他&---&---&---&---\cr
+}}$$
+
 \end