doc/jfmglue.tex

   1 %#! time luatex jfmglue
   2 \input s1sty.tex % style file
   3 \newcount\ncount
   4 \def\node#1{
   5   \ifnum\ncount=0 \ncount=1\else\longrightarrow\fi
   6   \setbox0=\hbox{\kern.5em$\mathstrut#1$\kern.5em}\dp0=0pt
   7   \hbox{\vrule
   8     $\vcenter{\hsize=\wd0\hrule\kern.5ex\copy0\kern.5ex\hrule}$%
   9     \vrule\kern.1em}{}}
  10 \def\nk{{\rm kern}\ }
  11 \def\ng{{\rm glue}\ }
  12 \def\np{{\rm penalty}\ }
  13 \def\z{\,{\rm zw}}
  14 \jfont\tenmini={file:ipam.ttf:slant=0.5;jfm=ujis} at 13\jQ
  15 \def\mibox#1{\hbox{\it #1\/}}\def\IT#1{{\it #1\/}}
  16 \ltjsetparameter{alxspmode={`\$,allow}}
  17 \ltjsetparameter{alxspmode={`\\,allow}}
  18 \ltjsetparameter{alxspmode={`\',allow}}
  19
  20 \centerline{\big Lua\TeX-ja 和文処理グルーについて}\bigskip
  21 \centerline{\large\the\year/\the\month/\the\day}\medskip
  22
  23 本文書では，Lua\TeX-jaが（現時点において）和文処理に関わるglue/kernを
  24 どのように挿入するかの内部処理について説明する．
  25
  26 \bigskip
  27 {\large\bf\noindent これは仕様・内部処理の提案の1つにしかすぎません．最終的にこのようになる
  28 保証はどこにもありませんし，これを書いている時点では実際のLuaコードは書きあがっていません．}
  29
  30 \beginsection 予備知識
  31
  32 説明に入る前に，段落やhboxの中身は，\TeX の内部ではnode達による
  33 リストとして表現されていることに注意する．nodeの種類については，
  34 \IT{The\ Lua\TeX\ Reference}の第8章を参照して欲しい．代表的なものを挙げると，
  35
  36 \item \IT{glyph\_node}: 文字（合字も含む）を表現する．和文処理グルーを挿入する際には，
  37 既に各\IT{glyph\_node}が欧文文字のものか和文文字のものか区別がついている．また，
  38 しばしば\IT{glyph\_node}~$p$と，それの表す文字の文字コード$p.\mibox{char}$とを同一視する．
  39 \item \IT{glue\_node}: glueを表す．
  40 \item \IT{kern\_node}: kernを表す．各|kern_node|には|subtype|という値があり，
  41 次の3種類を区別できるようになっている．
  42 \itemitem 0: 欧文用TFM由来
  43 \itemitem 1: 明示的な|\kern|か，イタリック補正 (|\/|) によるもの
  44 \itemitem 2: |\accent|による非数式アクセント用文字の左右位置調整のためのもの
  45 \item \IT{penalty\_node}: penaltyを表す．
  46 \item \IT{hlist\_node}: hbox（水平ボックス）を表す．
  47 \enditem
  48
  49
  50 \item 次のように，nodeがどのように連続しているかを表すことにする．
  51 $$
  52 \node{a}\node{b}_{1}\node{c}
  53 $$
  54 下添字は，Lua\TeX-jaにおいてそのnodeの役割を区別するためにつけられた
  55 値（icflagと呼ぼう）であり，次のようになっている．
  56 $$
  57 \vbox{\halign{#:\ \hfil&#\hfil\quad&#:\ \hfil&#\hfil\cr
  58 1&イタリック補正由来のkern &
  59 2&禁則処理用penalty\cr
  60 3&JFM由来のglue/kern&
  61 4&「行末」との間に入るkern\cr
  62 5&|\kanjiskip|用glue&
  63 6&|\xkanjiskip|用glue\cr
  64 7&リスト先頭/末尾に入るglue/kern/penalty&
  65 8&既に処理対象となったnode\cr
  66 }}
  67 $$
  68 和文処理グルーの挿入処理に一度通されたnodeは，みなicflagが2以上となることに注意．
  69
  70 なお，上添字はnodeのsubtypeを表す．
  71 \item {\sf jaxspmode}のようなサンセリフ体で，|\ltjsetparameter|で設定可能なパラメタ値を表す．
  72 \item タイプライタ体の|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|は，
  73 それぞれ「和文間空白」「和欧文間空白」の意味で抽象的に用いている．
  74 \item nil値は$\emptyset$と書く．
  75 \enditem
  76
  77 \beginsection 方針など
  78
  79 本バージョンにおいては，JFM由来グルーと|\[x]kanjiskip|の挿入は同じ段階で行われる．
  80 大雑把に言うと，
  81 $$
  82 \vbox{\hsize=0.85\hsize\bf 和文処理グルーの挿入処理では，以下は存在しないものとして扱われる：
  83 \item 「文字に付属する」アクセントやイタリック補正．
  84 \item 行中数式の内部．
  85 \item 実際の組版中には現れないinsertion, vadjust, mark, whatsit node達．
  86 \enditem}
  87 $$
  88
  89 \beginparagraph 和文文字の「自然長」（JFMにおける{\tt width}の指定値）について
  90
  91 p\TeX においては，和文文字の行頭と行末に自動的にglueやkernをおくことはできなかったことから，
  92 JFMにおける文字幅の意味は，
  93 $$
  94 \hbox{\vbox{\hsize=0.8\hsize \noindent
  95 「その文字が行頭におかれるときの，版面左端の位置」を左端，\hfill\break
  96 「その文字が行末におかれるときの，版面右端の位置」を右端としたときの幅}}
  97 $$
  98 というように，明確な意味があるものであった．例えば，乙部さんによるぶら下げ組パッケージ ({\tt burasage.lzh})
  99 においては，句読点類（「|，、．。|」の4文字）の文字幅は0.0となっている．
 100
 101 一方，Lua\TeX-ja においては，和文文字が行末にきた場合，その文字と行末の間にkernを挿入することができる：
 102 例えば，前に挙げた4文字についてぶら下げ組をしたいのであれば，
 103
 104 \begintt
 105    [1701] = {
 106       chars = { 'lineend' }
 107    },
 108    [42] = {
 109       chars = { '，', '、', '．', '。' },
 110       align = 'left', left = 0.0, down = 0.0,
 111       width = 0.5, height = 0.88, depth = 0.12, italic=0.0,
 112       kern = { [1701] = -0.5, ...}
 113    }, ...
 114 \endtt
 115 のように，「文字|'lineend'|との間に負のkernをおく」ように指定すればよい．
 116 そのため，p\TeX と比較すると，JFMにおける|width|の指定値に絶対的な意味はあまりないことになる．
 117 {\small 行頭にもkern をおけるようにするかどうかは検討中である．}
 118
 119
 120 \beginparagraph グルーの挿入単位「塊」
 121
 122 和文処理グルーの挿入処理は，
 123 ごく大雑把にいうと，「連続する2つのnodeの間に何を挿入するか」の繰り返しである．
 124 実際の挿入処理は，「隣り合った2つの『塊』\IT{Nq}, \IT{Np}の間に何を入れるか」を
 125 単位として行われる．
 126
 127 \medskip\noindent{\bf 定義}\quad
 128 「{\bf 塊}」（\IT{Nn}などで表す）とは，次の4つのいずれかの条件を満たすnode（達のリスト）
 129 のことである：
 130 \enum icflagが2以上6以下 or 8であるnode達の連続からなるリスト．
 131
 132 このようなnode達は，既に組み上がったhboxを|\unpackage|により解体したときに発生する．
 133 一度和文処理グルーの挿入処理が行われているため，二重の処理を防ぐためにこうして1つの塊を構成させている．
 134
 135 なお，icflagが7であるnodeは，処理中に発見されしだい削除される
 136 （hboxの先頭や末尾に挿入されたglue/kern/penaltyであるので，
 137 本来の「段落/hboxの中身に適宜グルーを挿入する」という目的を考えると存在すべきでない）．
 138 \enum 数式開始を表す\IT{math\_node}から始まる文中数式を表すnodeのリスト：
 139 $$
 140  \node{\hbox{数式境界（開始）}}
 141  \longrightarrow\hbox{（この間，行中数式が続く）}
 142  \node{\hbox{数式境界（終了）}}
 143 $$
 144 \enum \IT{glyph\_node}~$p$と，それと切り離すことが望ましくないと考えられるnode達：
 145 $$
 146  \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}^2
 147  \node{\hbox{アクセント文字}}
 148  \node{\nk\hskip-.5em}^2\Bigr]
 149  \node{p}
 150  \Bigl[\node{\nk\hskip-.5em}_1\Bigr]
 151 $$
 152 \enum {\bf 以下のどれにもあてはまらない}node~$p$：
 153 \itemitem 組版結果からは消えてしまう，\IT{ins\_node},
 154 \IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}．
 155 \itemitem penalty（←但し，挿入処理の過程で値が変更されることはある）
 156
 157 \enditem
 158
 159 \medskip\noindent{\bf 記号}\quad
 160 \IT{Bp}で，塊\IT{Nq}と塊\IT{Np}の間にある\IT{penalty\_node}達の配列を表す．
 161
 162
 163 \beginsection 挿入処理の大枠
 164
 165 \beginparagraph 「塊」の保持するデータ
 166
 167 「塊」\IT{Np}は，内部では少なくとも次の要素を持ったテーブルとして表される：
 168
 169 \item \IT{.first}: \IT{Np}の先頭のnode．
 170 \item \IT{.nuc}: \IT{Np}の「核」となるnode．
 171 \itemitem 1., 2.によるものである場合，$\mibox{Np.nuc}=\mibox{Np.first}$．
 172 \item \IT{.last}: \IT{Np}の最後のnode．
 173 \item \IT{.id}: \IT{Np}の種類を表す値．
 174 \itemitem 1.によるものである場合，\IT{id\_pbox}（Pseudo BOXのつもり）．
 175 \itemitem 3.によるものであり，$p$が和文文字だった場合，\IT{id\_jglyph}．
 176 \itemitem 3.によるものであり，$p$が垂直変位がnon-zeroなhbox，
 177 あるいはvbox, ruleだった場合，\IT{id\_box\_like}．
 178 \itemitem それ以外の場合，node~$p$の種別を表す数値$p.\mibox{id}$そのもの．
 179 （数値そのものだと使い勝手が悪いので，\IT{id\_glyph}, \IT{id\_glue}, \IT{id\_kern}などと
 180 別名を定義している）
 181 \enditem
 182
 183 \medskip\noindent{\bf 定義}\quad
 184 「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{head}(\mibox{Np})$は，以下で定義される：
 185
 186 \noindent{\small （説明の都合上作った記法で，Luaソース中にはこのような書き方はない）}
 187
 188 \item \IT{Np.id}が\IT{id\_hlist}の場合：後に述べる{\tt check\_box}関数を用いて，
 189 hbox~\IT{Np.nuc}中の「最初のnode」「最後のnode」を求める．
 190 \item \IT{Np.id}が\IT{id\_pbox}の場合：\IT{id\_hlist}の場合とほぼ同様．
 191 \item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_glyph}$（欧文文字）の場合：
 192 \itemitem \IT{glyph\_node}~\IT{Np.nuc}が単一の文字を格納している（合字でない）場合は，\IT{Np.nuc}自身．
 193 \itemitem そうでない場合は，合字の構成要素の先頭→構成要素の先頭→……
 194 と再帰的に探索し，最後にたどり着いた\IT{glyph\_node}．
 195 \item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_disc}$ (discretionary break) の場合：
 196 \IT{disc\_node}は，
 197 \item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_jglyph}$（和文文字）の場合：\IT{Np.nuc}自身．
 198 \item $\mibox{Np}.\mibox{id}=\mibox{id\_math}$（数式境界）の場合：
 199 「文字コード$-1$の欧文文字」を仮想的に考え，それを$\mibox{head}(\mibox{Np})$とする．
 200 \item それ以外の場合：未定義．敢えて書けば$\mibox{head}(\mibox{Np}):=\emptyset$．
 201 \enditem
 202
 203 \noindent 同様にして，「\IT{Np}の中身の先頭」を意味する$\mibox{last}(\mibox{Np})$も定義され，
 204 「\IT{Np}は，先頭が$\mibox{head}(\mibox{Np})$，
 205 末尾が$\mibox{tail}(\mibox{Np})$であるような単語」のように
 206 考えることができる．
 207
 208 \medskip\noindent{\bf 定義}\quad
 209 「\IT{glyph\_node}~$h$の情報を算出する」とは，
 210 $h\neq\emptyset$の時に，テーブル\IT{Np}に
 211 以下のような要素を追加することである：
 212
 213 \item \IT{.pre}: $h$の文字コードに対する{\sf prebreakpenalty}パラメタの値
 214 \item \IT{.post}: $h$の文字コードに対する{\sf postbreakpenalty}パラメタの値
 215 \item \IT{.xspc\_before}, \IT{.xspc\_after}: $h$の前後に|\xkanjiskip|が挿入可能であるかの
 216 指定値（パラメタ{\sf jaxspmode}, {\sf alxspmode}由来）
 217 \item \IT{.auto\_xspc}: $h$での{\sf autoxspacing}パラメタの値
 218 \enditem
 219
 220 $h$が和文文字を格納している場合は，さらに次の要素の追加作業も含む：
 221
 222 \item \IT{.size}: $h$で使われている和文フォントのフォントサイズ．
 223 \item \IT{.met}, \IT{.var}: 使われているJFMの情報．
 224 \item \IT{.auto\_kspc}: {\sf autospacing}パラメタの値．
 225 \enditem
 226
 227 \beginparagraph 全体図
 228
 229 \enum 変数類の初期化
 230 \itemitem 処理対象が段落の中身（後で行分割される）の場合：$\mibox{mode}\leftarrow\top$
 231 \itemT \IT{lp}（node走査用カーソル）の初期位置は，
 232 リスト先頭部にある|\parindent|由来のhboxや
 233 local paragraph（$\Omega$由来）等の情報を格納するwhatsit nodeたちが終わった所
 234 （つまり，段落本来の先頭部分）となる．
 235 \itemT \IT{last}（リスト末尾のnode）も，リストの最後部に挿入される|\parfillskip|由来のglue%
 236 を指す．
 237 \itemitem
 238 処理対象がhboxの中身の場合：$\mibox{mode}\leftarrow\bot$
 239 \itemT \IT{lp}はリスト先頭．
 240 \itemT 番人として，リスト末尾にkernを挿入．\IT{last}はこのkernとなる．
 241
 242 \enum 先頭が\IT{lp}以降にある塊で，一番早いものを\IT{Np}にセットする．
 243 \itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら，処理対象のリストに塊はないので，8.へ．
 244 \itemitem そうでなければ，$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく．
 245 \itemitem 本段階終了後，\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる．
 246
 247
 248 \enum ({\tt handle\_list\_head})
 249 リストに最初に出てくる塊\IT{Np}が求まったので，リスト「先頭」とこの塊との間に和文処理グルーを挿入．
 250
 251 \enum 今の塊\IT{Np}と，その次の塊の間に入る和文処理グルーを求めるため，
 252 一旦$\mibox{Nq}\leftarrow \mibox{Np}$として待避させ，次の塊\IT{Np}を探索する．
 253 \itemitem 作業の途中で$\mibox{lp}=\mibox{last}$となったら，\IT{Nq}がリスト中最後の塊であるので，
 254 7.へ．
 255 \itemitem そうでなければ，$\mibox{head}(\mibox{Np})$の情報を算出しておく．
 256 \itemitem 本段階終了後，\IT{lp}は\IT{Np.last}の次のnodeとなる．
 257
 258 \enum \IT{Nq}と\IT{Np}の間に和文処理グルーを挿入する．\IT{Np.id}による場合分けを行う．
 259 「main loop その\nobreak1,~2」を参照のこと．
 260
 261 \enum \IT{Np}が単一の文字ではない{\small （合字など）}可能性がある以下の場合において，
 262 $\mibox{tail}(\mibox{Np})$の情報を算出する．終わったら，再びループに入るため，4.へ．
 263
 264
 265 \itemitem \IT{id\_glyph}（欧文文字）のとき
 266 \itemitem \IT{id\_disc} (discretionary break) のとき
 267 \itemitem \IT{id\_hlist}のとき
 268 \itemitem \IT{id\_pbox}のとき
 269
 270 \enum ({\tt handle\_list\_tail})
 271 リストの最後にある塊\IT{Nq}が求まったので，この塊とリスト「末尾」の間に和文処理グルーを挿入．
 272
 273 \enum $\mibox{mode}=\bot$の場合，番人となるkernを1.において挿入したので，その番人を削除する．
 274
 275 \enditem
 276
 277 \beginsection リスト先頭・末尾の処理と「boxの内容」
 278
 279 \beginparagraph リスト先頭の処理 ({\tt handle\_list\_head})
 280
 281 次の場合に，
 282 \IT{Np}で使われているのと同じJFMを使った「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
 283 \IT{Np}との間に入るglue/kernを，\IT{Np.first}の直前に挿入する：
 284 \item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_jglyph}$（和文文字）
 285 \item $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_pbox}$であり，$\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字であるとき．
 286 \enditem
 287 $$
 288 \vcenter{\halign{$\mibox{mode}=#$:\qquad\hfil&$#$\hfil\cr
 289 \bot&\node{\kern-1em}\,\hbox{（リスト先頭）}\longrightarrow\cdots\node{g}_7\node{\mibox{Np}}\cr
 290 \top&\node{\hbox{{\tt\char92 parindent}由来hbox}}\longrightarrow\cdots\Bigl[\node{\np 10000}_7\Bigr]\node{g}_7\node{\mibox{Np}}\cr
 291 }}
 292 $$
 293 ここで，$g$がglueかつ$\mibox{mode}=\top$かつ$\#\mibox{Bp}=0$のときのみ，|\parindent|由来のhboxの直後で改行されることを防ぐために
 294 $g$の直前にpenaltyを挿入する．{\small
 295 （$\#\mibox{Bp}$が1以上の場合は，|\parindent|と\IT{Np}の間にある
 296 penaltyのため，\IT{Np}の直前での改行が起こり得る状態となっているので，
 297 特にそれを抑制することもしない）\inhibitglue}．
 298
 299
 300 \beginparagraph リスト末尾の処理 ({\tt handle\_list\_tail})
 301
 302 この場合，\IT{mode}の値により処理が全く異なる．
 303
 304 \noindent{\bf A: \IT{mode}が偽である場合．}
 305
 306 この場合はリストはhboxの中身だから，行分割はおこり得ない．
 307 リスト先頭の処理と同様に，
 308 次の場合に
 309 \IT{Nq}と「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」と
 310 の間に入るglue/kernを，\IT{Nq.last}の直後に挿入する：
 311 \item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$（和文文字）
 312 \item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり，$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき．
 313 \enditem
 314 $$
 315 \node{\mibox{Nq}}\node{g}_7\longrightarrow\cdots\node{\nk\hbox{（番人）}}
 316 $$
 317 上の番人は，次のstepで除去されるのだった．
 318
 319 \medskip
 320 \noindent{\bf B: \IT{mode}が真である場合．}
 321
 322 この場合，段落の末尾には常に|\penalty 10000|と|\parfillskip|由来のグルーが存在する．
 323 そのため，上のように「文字コードが{\tt 'boxbdd'}の文字」との空白を考えるのではなく，
 324 まず，\IT{Nq}が行末にきたときに行末との間に入る空白$w$を代わりに挿入する．
 325 \item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_jglyph}$（和文文字）
 326 \item $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_pbox}$であり，$\mibox{tail}(\mibox{Nq})$が和文文字であるとき．
 327 \enditem
 328 $$
 329 \node{\mibox{Nq}}\node{\nk w}_7\node{\np10000}\longrightarrow\cdots
 330 \node{\ng (\hbox{\tt\char92 parfillskip})}
 331 $$
 332 次に，|\jcharwidowpenalty|の挿入処理を行う→省略．
 333
 334 \beginparagraph box内の「最初/最後の文字」の検索 ({\tt check\_box})
 335
 336 「hboxの中の文字と外の文字の間に」|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|の挿入を行えるようにするため，
 337 {\tt check\_box}関数ではhbox内の「最初のnode」「最後のnode」の検索を行う．
 338
 339 \item 以下のnodeは検索から除外される：
 340 \itemitem 組版結果からは消えてしまう，\IT{ins\_node},
 341 \IT{mark\_node}, \IT{adjust\_node}, \IT{whatsit\_node}, penalty．
 342 \itemitem （box中身の先頭/末尾に入っている）icflagが7のglue/kern/penalty．
 343 \itemitem アクセント部とイタリック補正．
 344 \item \IT{hlist\_node}~$q$に出会ったら，$q$の垂直変位量が0である限り，検索は$q$の内部も進む．以下同文．
 345 \item 検索して得られた「最初のnode」「最後のnode」がそれぞれ\IT{glyph\_node}でなければ，
 346 実際には$\emptyset$を返す．
 347 \enditem
 348
 349 \beginsection main loop その1: $\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字の場合
 350
 351 これは，次の3つの場合でおこる：
 352 \item \IT{Np.id}が\IT{id\_jglyph}の場合（本当に和文文字）
 353 \item \IT{Np.id}が\IT{id\_pbox}で，$\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字の場合
 354 \item \IT{Np.id}が\IT{id\_hlist}で，$\mibox{head}(\mibox{Np})$が和文文字の場合
 355 \enditem
 356 前2つの場合は，$\mibox{head}(\mibox{Np})$は処理対象のリスト中に現れる本当の\IT{glyph\_node}である．
 357 一方，最後の場合では，$\mibox{head}(\mibox{Np})$はリスト中にあるhboxの中身（の最初）に出現する\IT{glyph\_node}である．
 358
 359 そのため，挿入される和文処理グルーの種類については，前2つと最後の場合とで扱いを異なったものとしている：
 360 $$
 361 \vbox{\hsize=0.85\hsize\bf
 362 hboxの外側の文字と内側の文字の間の空白では，|\kanjiskip|, |\xkanjiskip|の量の計算では両方の文字の情報を使うが，
 363 JFM由来のグルーでは内側の文字の情報は使われない．}
 364 $$
 365
 366
 367 \beginparagraph 挿入されるglue/kernの種類
 368
 369 \setbox1=\hbox{hp}\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.25em\relax depth \dimexpr \dp1+0.25em\relax}
 370 $$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
 371 \vcenter{\halign{\hfil\IT{#}\hfil\hskip1em\copy2%
 372 \:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil%
 373 \:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\cr
 374 \IT{Nq}→&id\_jglyph&&&id\_hlist 非文字\cr
 375 \IT{Np}↓&id\_pbox 和&id\_hlist 和&$\mibox{head}(\mibox{Nq})$\rm: 欧文&id\_box\_like&id\_glue&id\_kern\cr
 376 \noalign{\vskip.25em\hrule\vskip.25em}
 377 id\_jglyph&\rm E${}+{}$(M→K)&{\rm $\rm O_A$→$\rm K$}&{\rm $\rm O_A$→X}&$\rm O_A^*$&$\rm O_A$&$\rm O_A^+$\cr
 378 id\_pbox 和&\rm E${}+{}$(M→K)&{\rm $\rm O_A$→$\rm K$}&{\rm $\rm O_A$→X}&$\rm O_A^*$&$\rm O_A$&$\rm O_A^+$\cr
 379 id\_hlist 和&\rm E${}+{}$($\rm O_B$→$\rm K$)&{\rm K}${}^+$&{\rm X}${}^+$&---&---&---\cr
 380 }}$$
 381 挿入されるglue/kernの種別を表にすると上のようになる．最後の1つ以外は，挿入される位置は\IT{Np.first}の直前であり，
 382 以降「右側の空白」と呼ぶ．
 383 \item M: \IT{Nq}と\IT{Np}の間に入るJFM由来のglue/kern．
 384 \IT{Nq}, \IT{Np}の間で|\inhibitglue|を発行した場合は抑止される．
 385 \itemitem 両方の塊で使われているJFMが（サイズもこめて）等しかったら量の決定は容易い．
 386 \itemitem そうでなければ，まず
 387 $$
 388 \vcenter{\halign{\hfil$#:={}$&(\inhibitglue#\inhibitglue)\cr
 389 gb&\IT{Nq}と「文字コードが|'diffmet'|の文字」との間に入るglue/kern．\cr
 390 ga&「文字コードが|'diffmet'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue/kern．\cr
 391 }}
 392 $$
 393 として2つの量を計算．少なくとも片方が$\emptyset$の場合は，もう片方の値を用いる．
 394 そうでなければ，両者の値から自然長，伸び量，縮み量ごとに計算
 395 （方法として，平均，和，大きい方，小さい方）を行い，それによって得られたglue/kernを採用する．
 396 \item K: |\kanjiskip|を表すglueを挿入（$\emptyset$にはならない）．
 397 \itemitem 両方の塊において「|\kanjiskip|の自動挿入が無効」
 398  ($\mibox{Nq.auto\_kspc}\vee \mibox{Np.auto\_kspc}=\bot$) ならば，長さ0のglueを挿入する．
 399 \itemitem {\sf kanjiskip}パラメタの自然長が$\hbox{\tt\char92maxdimen}=(2^{30}-1)\,{\rm sp}$であれば，
 400 JFMに指定されている|\kanjiskip|の量を用いる．\IT{Nq}, \IT{Np}で使われているJFMが異なった時の処理は，
 401 Mの場合と同じである．
 402 \itemitem 上のどれにも当てはまらなければ，{\sf kanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する．
 403 \item X: |\xkanjiskip|を表すglueを挿入（$\emptyset$にはならない）．
 404 \itemitem 両方の塊において「|\xkanjiskip|の自動挿入が無効」
 405  ($\mibox{Nq.auto\_xspc}\vee \mibox{Np.auto\_xspc}=\bot$) ならば，長さ0のglueを挿入する．
 406 \itemitem \mibox{Nq}内の文字が「直後への|\xkanjiskip|挿入が無効」という指定
 407 ($\hbox{\sf alxspmode}\ge 2$)であるか，
 408 \mibox{Np}内の文字が「直前への|\xkanjiskip|挿入が無効」という指定
 409 ($\hbox{\sf jaxspmode}\ge 2$)であるならば，長さ0のglueを挿入する．
 410 \itemitem {\sf xkanjiskip}パラメタの自然長が|\maxdimen|であれば，
 411 JFMに指定されている|\xkanjiskip|の量を用いる．
 412 \itemitem 上のどれにも当てはまらなければ，{\sf xkanjiskip}パラメタで表される量のglueを挿入する．
 413 \item $\rm O_B$: \IT{Nq}と「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」との間に入るglue．
 414 Mのバリエーションと考えればよく，同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される．
 415 \item $\rm O_A$: 「文字コードが|'jcharbdd'|の文字」と\IT{Np}との間に入るglue．
 416 Mのバリエーションと考えればよく，同じように|\inhibitglue|の指定で抑止される．
 417 \item E: \IT{Nq}が行末にきたとき，\IT{Nq}と行末の間に入る空白 (kern)．挿入位置は\IT{Nq.last}の直後．
 418 \itemitem JFMでは「文字コード|'lineend'|の文字」との間に入るkern量として設定できる．
 419 \itemitem 右側の空白がkernであるときは挿入されない．
 420 \itemitem この種のkernが挿入される時，右側の空白は自然長がEの分だけ引かれる．
 421 \enditem
 422
 423 あと，注として，
 424
 425 \item 「→」は，左側の種類（例えばM）のglue/kernは$\emptyset$であった場合，右側の種類（例えばK）のglueを挿入することを示す．
 426 \item ${}^*$, ${}^+$は，penalty処理時のバリエーションを表す．次の節では，上添字なしの場合のpenaltyの処理について述べる．
 427 \enditem
 428
 429 \beginparagraph penaltyまわりの処理
 430
 431 隣り合った塊\IT{Nq}, \IT{Np}の間には，集合\IT{Bp}で表される0個以上のpenaltyがあるのだった：
 432 $$
 433 \node{\mibox{Nq}}
 434 \Bigl[\node{\hbox{E}}_4\Bigr]
 435 \longrightarrow\cdots
 436 \hbox{（penaltyある可能性あり）}\cdots
 437 \Bigl[\node{\hbox{M, K, X他}}_{3,\,5,\,6}\Bigr]
 438 \node{\mibox{Np}}
 439 $$
 440 このような状況下で，禁則処理に関係するpenaltyの挿入処理は，原則として（上ほど優先度高）：
 441 \item $\#\mibox{Bp}\ge 1$の場合，{\bf 全ての}\IT{Bp}の元$p$~(penalty)に対して，
 442 $$p.\mibox{penalty}\mathrel{+}=\mibox{Nq.post}+\mibox{Np.pre}.$$
 443 \itemitem
 444 全ての\IT{Bp}の元に対して行うのは，実際にはどのpenaltyの位置で行分割が行われるかわからないからである．
 445 \itemitem $\mibox{Nq.id}=\mibox{id\_hlist}$の場合には，\IT{Nq.post}は0と扱われる．
 446 $\mibox{Np.id}=\mibox{id\_hlist}$の場合も同様．
 447
 448 \item $\#\mibox{Bp}=0$かつ$\mibox{Nq.post}+\mibox{Np.pre}=:a\neq 0$，
 449 さらに「右側の空白がkernでない」場合：
 450 $p.\mibox{penalty}=a$であるpenalty~$p$を作成し，
 451 それを（M, K他のglue挿入前に）\IT{Np.first}の直前に挿入する．
 452 つまり，この場合，
 453 $$
 454 \longrightarrow\cdots\longrightarrow\node{\np a}
 455 \Bigl[\node{\hbox{M, K, X他}}_{3,\,5,\,6}\Bigr]
 456 \node{\mibox{Np}}
 457 $$
 458 となる．
 459 \item $\#\mibox{Bp}=0$かつ${\rm E}\neq 0$（かつ右側の空白がglue）の場合：同様に新たなpenaltyを作る．\hfil\break
 460 （Eの位置で改行可能にしたいので）
 461 \item つまり，$\#\mibox{Bp}=0$であったとき，新たなpenaltyを作らないのは，
 462 ${\rm E}=0$かつ$a=0$の場合に限る．
 463 \enditem
 464
 465 なお，penalty値の計算では，$+10000$は正の無限大，$-10000$は負の無限大として扱っている．
 466 そのため，通常の加減算で絶対値が10000を越えたら，その分はカットしている．
 467 あと，$(10000)+(-10000)=0$としている．また，\IT{Nq.post}, \IT{Np.pre}が$\emptyset$の場合は，
 468 それぞれ0として扱う．
 469
 470 \medskip\noindent{\bf バリエーションについて}\quad
 471 前節の表に出てきた${}^*$, ${}^+$では，上の原則から以下の点が変更されている．
 472 変更点は，いずれも$\#\mibox{Bp}=0$の場合に関するところのみである：
 473
 474 \item ${}^*$: \IT{Nq}と\IT{Np}の間での行分割を常に可能とするため，
 475 右側の空白（$\rm O_A$）が$\emptyset$の場合であっても新たなpenaltyを作る．
 476
 477 \item ${}^+$: このとき，\IT{Nq}と\IT{Np}の間での行分割は元々不可能である．
 478 Lua\TeX-ja では，そのような場合を「わざわざ行分割可能に」することはしない．そのため，
 479 \itemitem 右側の空白がglueの場合は，値が10000のpenaltyを作成する．
 480 \itemitem 右側の空白が$\emptyset$かkernの場合は，新たにpenaltyを作ることはしない．
 481 \enditem
 482
 483 \beginparagraph いくつかの例：未完
 484
 485 \beginsection main loop その2: その他の場合
 486
 487 \setbox1=\hbox{hp}\setbox2=\hbox to 0.4pt{\vrule height\dimexpr \ht1+0.25em\relax depth \dimexpr \dp1+0.25em\relax}
 488 $$\def\:{\hskip0.5em}\lineskiplimit=\maxdimen\lineskip=0pt
 489 \vcenter{\halign{\hfil\IT{#}\hfil\hskip1em\copy2%
 490 \:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil%
 491 \:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\:&\:\hfil\IT{#}\hfil\cr
 492 \IT{Np}→&&id\_hlist 非文字\cr
 493 \IT{Nq}↓&$\mibox{head}(\mibox{Nq})$\rm: 欧文&id\_box\_like&id\_glue&id\_kern\cr
 494 \noalign{\vskip.25em\hrule\vskip.25em}
 495 id\_jglyph&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
 496 id\_pbox 和&\rm E${}+{}$({\rm $\rm O_B$→X})&\rm E${}+\rm O_B^*$&\rm E${}+\rm O_B$&\rm E${}+\rm O_B^+$\cr
 497 id\_hlist 和&\rm X${}^+$&---&---&---\cr
 498 他&---&---&---&---\cr
 499 }}$$
 500
 501 \end